第55回日本脈管学会総会

講演情報

会長要望演題

透析患者の遠隔成績向上のための対策

2014年10月30日(木) 17:30 〜 18:20 第3会場 (202会議室)

座長: 石田敦久(社会医療法人社団十全会 心臓病センター榊原病院 外科)

17:30 〜 18:20

[PR-13-4] よりよいシャント作製を目指して:当院おける前腕を含むtranspositionシャント症例の検討

岩嵜友視 (偕翔会 豊島中央病院)

キーワード:vascular access, surgical procedure

【背景・目的】尺側皮静脈のtransposition,大伏在静脈の自家移植などの手技(以下t法)を用いることで,人工血管シャント(AVG)を避け,自家血管シャント(AVF)を作製する期会を増やすことができる。当院では近年,前腕も含め積極的に適応するようにしている。当院の症例をもとにt法の有益性について検討した。【対象・方法】2012年4月から2013年5月までの当院のAVF・AVG作製術症例109例を対象とし,平均年齢:70.1歳,男女比:0.34であった。通常AVF作製70例をF群,t法を用いたAVF作製19例(前腕症例11例含)をtF群,AVG作製20例をG群とし,後ろ向きに比較検討した。【結果】tFを積極的に行うことでAVGの割合は,減り,12年7月以降0症例となった。F群,tF群,G群の順でそれぞれ,(1)1次開存率(1年):68.9,60.0,57.7%,(2)1次開存率(1年):96.8,88.4,85.0%,(3)感染率:0,0,15.8%であった。開存率では,tF群は,F群に劣るものG群より優れた成績となった。G群では,感染率が高く大きな問題となった。【考察】t法を含めAVFがAVGより,開存率,血管内治療の頻度,感染率から優れていることは,諸家の報告と同様であった。t法の導入で前腕でのAVF作製の頻度を増やすことなった。t法では,尺側静脈が径3mm以上である方が早期閉塞が少なく適していた。また,TLA麻酔やトンネラーの使用でより低侵襲でスムーズに手技が行えた。問題点として,手技がやや煩雑になることがある。また,超音波検査での血管の術前評価は必須である。【結語】transposition法は有益な手技であり,安易にAVGを作製する前に精選すべき方途であり,アクセス作製医としては,習熟すべき手技と考えられた。