第55回日本脈管学会総会

講演情報

会長要望演題

腹部大動脈瘤破裂に対するステントグラフト治療1

2014年10月30日(木) 09:00 〜 09:40 第2会場 (アイシアター)

座長: 山本清人(名古屋大学大学院医学系研究科 血管外科学), 小野原俊博(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター)

09:00 〜 09:40

[PR-2-1] 破裂性腹部大動脈瘤(RAAA)に対するEVARの有用性―当科の工夫と治療成績―

森景則保, 田中裕也, 佐村誠, 上田晃志郎, 原田剛佑, 山下修, 村上雅憲, 末廣晃太郎, 濱野公一 (山口大学 血管外科)

キーワード:RAAA, EVAR

RAAAの救命にはopen repair(OR),EVARいずれにおいても出血制御とabdominal compartment syndrome(ACS)回避が重要である。当科では2001年からOR後にopen abdominal treatment(OAT)を導入し,2011年よりRAAAに対してEVARを第一選択としている。今回は両者の治療成績を比較し,EVARの有用性を検討するとともに,当科の工夫とstrategyを供覧する。【対象と方法】2001年以降のRAAAに対するEVAR 16例,OR 48例を対象とした。EVARは大腿動脈穿刺で18Frシースを挿入し,ショック例は即時に大動脈閉塞バルーンにより腎動脈上遮断し,double balloon法で遮断維持した状態で完成させる。EVAR後に腹腔内圧(IAP)が20mmHg以上で同時にVAC療法によるOATを施行するが,血腫除去は二期的に凝固切開装置を用いて施行する。両群でRutherford分類,Hardmanスコア,OAT施行率,術後最高IAP,術後合併症,手術死亡率,在院日数を比較検討した。【結果】術前因子のRutherford分類,Hardmanスコアは両群で有意差はなかった。OAT施行率はEVAR 19%,OR 36%(p=0.35),EVARにおけるOAT施行例のEVAR直後IAPは43±23 mmHgであった。術後最高IAPはEVAR 11±4 mmHg,OR 14±3 mmHgであった(p=0.10)。術後合併症(EVAR vs OR)は腸管壊死(6% vs 2%),腎不全(13% vs 7%),下肢虚血(6% vs 7%)に有意差はなく,呼吸不全(6% vs 40%)においてはEVARが有意に低率であった(p=0.03)。手術死亡率はEVAR 13%,OR 15%と同等であり,在院日数はEVAR 16±11日,OR 37±26日とEVARで有意に短縮された(p=0.007)。【結語】RAAAに対するEVARの手術死亡率はORと同等であり,入院期間は有意に短縮され,EVARを第一選択とする方針は妥当と思われる。