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[PR-6-1] 下部消化管内視鏡検査後の血行性人工血管感染が疑われた巨大腹部大動脈瘤人工血管置換術後患者に対する治療経験
Keywords:graft infection, abdominal aortic aneurysm
感染存在下の人工血管置換術は感染創を避け,汚染の無い部位で再建を行うのが一般的とされ,腹部大動脈の再建は感染組織の除去,大動脈の断端閉鎖,腋下-大腿動脈バイパス術が施行されてきた。しかし,この方法は手術が煩雑で,人工血管の再感染,大動脈断端の破綻,四肢の切断率の高さなどの問題があり,解剖学的再建が脚光を浴びている。今回我々は,腹部大動脈人工血管置換術後の人工血管感染において,腹腔内において非解剖学的血行再建を行うという新たな方法を採った。この方法では通常の非解剖学的血行再建より長期開存率が高く,また大動脈断端の破綻が起きず,また術後再感染の発生率が低い可能性も考えられ,腹部大動脈の人工血管感染の手術術式の一つの選択肢となりうる可能性もある。症例は65歳男性。直径10cmの腹部大動脈瘤に対し本年1月に人工血管置換術を施行した。術後経過に問題なく,術後3週間で炎症反応は正常化した。術後1か月半で大腸内視鏡検査を施行されたところ,その3日目に突然39度の発熱を認め,腹部CTで人工血管周囲膿瘍の診断となった。術後3ヵ月間膿瘍ドレナージを施行し,再人工血管置換術を施行した。手術は初回手術の人工血管を摘出,リファンピシン浸潤人工血管で通常通り中枢側吻合を行った。両脚は下大静脈前面より右側後腹膜腔内の右腸腰筋の前面を誘導し,右脚を後腹膜腔内で右下腹壁動脈の中枢側5cmの右外腸骨動脈と吻合,左脚はこの吻合部より岬角前面の後腹膜腔を通して左下腹壁動脈の中枢側5cmの外腸骨動脈と吻合した。その後両側内外腸骨動脈を分岐部で吻合した。先端を二股に分けた大網を感染創と新たな人工血管周囲に充填した。術後経過は良好である。