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[PR-6-2] 人工血管感染における術前抗生剤投与の意義
Keywords:graft removal, conservative
【背景】人工血管感染に対する治療の基本は,感染人工血管除去(graft removal,GR)及び長期の抗生剤投与だが,術前抗生剤投与の意義は明らかでない。【対象・方法】2000年から2014年の間に当科で行われた13例の人工血管感染(透析シャント感染は除外)に対する手術を後ろ向きに検討。感染に対して2週間以上の抗生剤投与から開始された保存的治療先行(C)群 3例と手術先行(S)群 10例に分類した。【結果】年齢は66±9歳,男性11例で,原疾患は腹部大動脈瘤2例,閉塞性動脈硬化症8例,Buerger病1例,高安病1例,ベーチェット病1例で,糖尿病は7例(54%),透析は3例(23%)。腹腔内の術後が3例(2例は大動脈十二指腸瘻),体表が10例,感染人工血管は全例ダクロン系であった。初回手術から感染診断までの期間の中央値は57.9(0.4‐293)か月。起因菌はMSSA 4例,MRSA 3例,Enterococcus faecalis 2例,その他4例。C群,S群を比較し,血行動態不安定,耐性菌などの因子に有意差はなかった。手術内容は,GR+血行再建がC群 2例,S群 6例,GRのみはC群 1例,S群 3例で,S群の1例は排膿のみであった。手術時間(C群,318±240分; S群,315±232分,以下同順),出血量(601±863g vs 1012±2315g),術後在院日数(46±42日 vs 39±17日)は同等だが,入院日数はC群で有意に長かった(109±64日 vs 48±16日,p = 0.01)。C群は全例感染に対する再治療を回避したが,S群では6例(60%)に再治療を要した(p = 0.19)。感染が原因の死亡はS群の1例(8%)であった。【結語】人工血管感染は多様な因子が背景にあるが,2週間以上の抗生剤加療後のGRは,長期の入院を要するものの再治療を回避する可能性がある。