第55回日本脈管学会総会

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会長要望演題

人工血管感染に対する治療の工夫

Thu. Oct 30, 2014 5:40 PM - 6:20 PM 第2会場 (アイシアター)

座長: 前田英明(日本大学 心臓血管呼吸器総合外科)

5:40 PM - 6:20 PM

[PR-6-3] FF bypass後人工血管感染に,パンタロン型vein graftで外腸骨動脈-対側総大腿動脈,同側経閉鎖孔浅大腿動脈bypassを施行した1例

玉手義久 (岩手県立胆沢病院 外科)

Keywords:graft infection, pantaloon vein graft

63歳男性【既往歴】他医で59歳時にAAA破裂でY型人工血管置換。60歳時に人工血管感染で再置換・大網被覆。【経過】深夜に突然の下血あり当院受診。CTで憩室出血が疑われたが,バイタルが安定していたため精査せず経過観察入院となった。早朝,大量下血後ショックとなり緊急CF施行。大腸に出血源は無く,再CTで人工血管右脚吻合部-小腸瘻が疑われ緊急手術となった。腹腔内は広範な小腸癒着で剥離に難渋した。人工血管右脚吻合部に大網被覆は無く,右尿管・小腸と強固に癒着していた。人工血管右脚と右EIAを遮断(右IIAは前手術で結紮)後,瘻孔部小腸を切除,吻合した。剥離で右尿管損傷し,トリミング後尿管ステント挿入・吻合した。解剖学的ルートでの右脚再建は感染の危険が高いと判断し,人工血管右脚を可及的中枢側で切除,断端閉鎖した。右EIA断端も閉鎖し,尿管吻合近傍にドレーン留置,閉創した。圧布・器具を一新しePTFEでF-F交叉バイパスを施行した。術後抗生剤はMEPMを使用したが,ドレーン培養でニューキノロン・カルバペネム耐性緑膿菌が検出されTOBに変更した。術後炎症反応上昇と左大腿創の腫脹・発赤が著明となり,左大腿創解放・排膿した。膿汁からCNS(MRS)が検出されたためVCMに変更し,連日洗浄したが膿性汚染が続いた。感染部の吻合部破綻が危惧されたため再手術の方針とした。大伏在静脈をパンタロン型に形成したグラフトを作成し,中枢側は腹膜外経路で露出した左EIAに吻合した。パンタロン右脚は腹直筋背側を通して右CFAに吻合し,左脚は閉鎖孔経路で左SFAに吻合した。感染グラフトを除去後,周囲組織のデブリドマン・大量洗浄を行った。術後ABIは右0.84/左0.76で,左大腿部感染は軽快,独歩退院した。