第55回日本脈管学会総会

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シンポジウム

Vascular teamによる重症虚血肢の治療

Thu. Oct 30, 2014 9:00 AM - 10:30 AM 第1会場 (ホール)

座長: 東信良(旭川医科大学 外科学講座 血管外科学分野), 井上芳徳(東京医科歯科大学医学部 血管外科)

9:00 AM - 10:30 AM

[SY-1-2] エコーガイド下神経ブロック麻酔を活用した重症虚血肢患者管理―血管病センター専属麻酔科医とのコラボレーション―

久良木亮一, 田中潔, 石村博史, 三井信介 (製鉄記念八幡病院 血管病センター)

Keywords:CLI, nerve block

【背景】重症虚血肢(CLI)患者,特に壊疽を有する患者の下肢救済には血流の増加が必須であり,バイパス術(BSX)の果たす役割は大きい。しかし現実には種々の併存疾患を有するCLI患者に対するBSXは,その侵襲の大きさから敬遠され,「低侵襲である」という理由で血管内治療を選択されることが多い。BSXは手術自体の侵襲は小さく,むしろ循環・呼吸動態に大きな影響を及ぼす気管挿管・人工呼吸管理による全身麻酔の侵襲が障壁となる。また壊死組織を有する患者には創洗浄・デブリードマンが必須であるが,処置に伴う疼痛が問題となる。【当院の方針】手術麻酔侵襲を軽減すべく,血管病センター専属麻酔科医による神経ブロック麻酔+鎮静,自発呼吸下でのBSXを積極的に導入している。また日々の創洗浄・デブリードマン前に神経ブロック麻酔を施行し,疼痛管理下での処置を行っている。【結果】2013年4月から2014年5月までの間にCLI患者39例40肢に対し神経ブロック麻酔下BSXを施行した。平均年齢は78.2歳,男女比は21:18。平均手術時間は286分(120-595分)。挿管麻酔への移行は無かった。1年救肢率は90%であった。同期間中,延べ58名(非BSX症例,非神経ブロック麻酔下BSX症例も含む)に対して創処置前の神経ブロック麻酔を延べ947回(1-74回/人,1-86日間/人)施行したが,処置時の痛みの訴えは無く,1例(血腫形成)を除き有害事象は認めなかった。【考察】併存疾患のためBSX施行不可能と判断されていたCLI患者も,神経ブロック麻酔を導入することで手術可能となり得る。神経ブロック麻酔は周術期疼痛管理の点でも非常に有用な手段である。麻酔科医との密な連携はCLI診療の質向上に繋がる。