第55回日本脈管学会総会

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シンポジウム

ここまで進化した脈管の基礎研究

Thu. Oct 30, 2014 9:00 AM - 10:30 AM 第3会場 (202会議室)

座長: 吉栖正生(広島大学大学院医歯薬保健学研究科・研究院 心臓血管生理医学教室), 下川宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野)

9:00 AM - 10:30 AM

[SY-2-4] 電子スピン共鳴からみた高血圧ならびにメタボリックシンドロームの細胞膜機能異常と微小循環障害

津田和志 (関西医療大学大学院 循環器代謝内科学)

Keywords:microcirculation, membrane fluidity

従来より微小循環障害の病態生理を細胞膜機能の変化からみる考え方が提唱されている。本研究では膜機能と循環不全との関連をみるため,高血圧やメタボリックシンドローム患者の膜流動性(fluidity)を電子スピン共鳴法にて測定し,血管障害との関連やその調節機構を検討した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧群に比し有意に低下していた。さらに膜fluidityの低下はbrachial-ankle pulse wave velocityや頸動脈エコーでのintima media thicknessの増加と有意に相関し,膜のrheologic behaviorや微小循環の異常が血管障害と深い関連を持つ可能性が示唆された。そして血漿nitric oxide(NO)代謝産物濃度が低値であるほど,また内因性NO合成酵素阻害物質(ADMA)濃度が高値であるほど赤血球膜fluidityは低下し,血管内皮障害によるNO作用不全が膜機能異常の成因に一部関与すると考えられた。さらに血漿アディポネクチンやレプチンの増加は血漿NO代謝産物レベルと相関し,赤血球膜fluidityの上昇を伴っていた。逆に血中酸化ストレスレベルや炎症反応が増大するほど,また血漿ホモシステインやTNF-α,retinol-binding protein 4(RBP4)濃度が高いほど赤血球膜fluidityと内皮機能は低下していた。一方,有酸素運動療法や減塩食,一部の薬物療法,閉経後女性ではホルモン補充療法を施行すると赤血球膜fluidityは有意に改善した。この様に電子スピン共鳴からみた膜機能異常は高血圧やメタボリックシンドロームの血管障害や内皮機能不全を反映し,肥満関連血管作動物質の影響を強く受ける。以上から本法は基礎研究と臨床成績とを結びつけ,これら疾患の治療効果の判定や臓器障害の予測に有用であると考えられた。