第55回日本脈管学会総会

講演情報

シンポジウム

冠動脈疾患の新しいエビデンスとチームアプローチ

2014年10月31日(金) 09:30 〜 11:10 第1会場 (ホール)

座長: 落雅美(医療法人社団葵会 川崎南部病院 心臓血管外科), 一色高明(帝京大学医学部 内科学講座)

09:30 〜 11:10

[SY-3-2] 機能的評価に基づいた治療戦略決定の意義

田中信大 (東京医科大学 循環器内科)

冠動脈狭窄の機能的重症度指標として、近年冠血流予備量比(Fractional Flow Reserve: FFR)が広く用いられている。FFRは再現性の高い指標であり、FFRに基づいて冠動脈ステントの治療適応を決定する戦略は、30%のステント留置を回避し、多枝病変症例においてはその後のイベント発生を20%抑制しうることが報告されている。FAME試験では、造影上3枝疾患と考えられた症例のうちFFR計測により機能的にも3枝疾患と判断されたのは14%のみであり、FFR値を加味してSYNTAX scoreを付けることにより、その後のイベント発生リスクをより識別し得ると考えられた。現在FFRガイドのPCIとCABGのランダム比較試験が2つ進行中である(SYNTAX II、FAME III試験)。
一方CABGを行う際においても、そのバイパス枝を考慮する際にFFRは有用である。負荷心筋シンチグラムでは、個々の枝の狭窄有意性を判断することは時に困難であり、その点FFRが有用である。FFRにより非有意狭窄と判断された枝につないだバイパスの開存率は低いことが示されており、バイパス手技を考慮する際にもFFRが有用な情報を与えてくれる。
CABGとPCIは、お互い切磋琢磨することにより、その治療成績を著しく向上させてきたが、個々の患者における最善の治療戦略を考慮する際には、お互い歩み寄ったうえでの討論が必須である。その際狭窄重症度を客観的に表現するFFRは、異なるアプローチを持つチームにとって重要な共通言語となりうる。