第55回日本脈管学会総会

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シンポジウム

冠動脈疾患の新しいエビデンスとチームアプローチ

Fri. Oct 31, 2014 9:30 AM - 11:10 AM 第1会場 (ホール)

座長: 落雅美(医療法人社団葵会 川崎南部病院 心臓血管外科), 一色高明(帝京大学医学部 内科学講座)

9:30 AM - 11:10 AM

[SY-3-5] スケレトナイズ動脈グラフトによる心拍動下冠動脈バイパスの役割

浅井徹 (滋賀医科大学 心臓血管外科)

 心拍動下冠動脈バイパス手術OPCABは、従来の手術侵襲を軽減し重症患者で手術リスクを減らす利点を有するが、技術的に極めて高い達成度を要求する術式であると同時にクオリティを貶めるピットフォールに満ちた手術ともいえる。さらに、スケレトナイズされた動脈グラフトを主体とする冠血行再建は、古典的な静脈によるACバイパスに比べ長期にバイパスの開存率が高く、梗塞予防、生命予後効果を延長することが期待されてきた。
 私達は滋賀医科大学附属病院で2002年1月から、一貫して単独冠動脈バイパス手術でOPCABをACS,重症心不全例を含めて適応し手術を完遂してきた。これらの患者群において、グラフトは両側の内胸動脈、右胃大網動脈、そして大伏在静脈を用い、長期開存性が不確かなコンポジットグラフト作成を極力回避してきた。これらの経験症例にPropensity-matching法を駆使して、動脈グラフトそれぞれの効果を検討したこれまでの解析データーを提示する。動脈グラフト主体のOPCABは従来の手術と何がどう異なるのか?現在において最も長期にバイパスの予後改善効果を発揮すると考えるバイパス手術のデザインを提示したい。
 また、こうした技術的難易度が高い手術のクオリティを落とすピットフォールを回避し、術中確実なグラフト機能を確認する現在に置ける最高水準と私達が考える動脈グラフトによる心拍動下冠動脈バイパス手術の実際を提示したい。バイパス手術は重症患者で狭心症や心不全を改善するだけでなく、長期にわたって梗塞予防、死亡率改善を示す唯一の治療であるが、さらに動脈グラフト主体のOPCABはどのような患者が最も恩恵を受けるかを提示し、ディスカッションを通じて認識いただく一助となれば幸いである。