第55回日本脈管学会総会

講演情報

シンポジウム

弓部大動脈瘤に対するステントグラフト治療 (chimney vs debranching)

2014年10月31日(金) 13:30 〜 15:30 第1会場 (ホール)

座長: 大木隆生(東京慈恵会医科大学 外科学講座), 蜂谷貴(慶應義塾大学医学部 心臓血管外科)

13:30 〜 15:30

[SY-4-5] 弓部大動脈瘤に対するステントグラフト:Totally endovascular法とDebranching法の比較

瀧澤玲央1, 手塚雅博1, 馬場健1, 百川文健2, 福島宗一郎1, 萩原慎1, 宿澤孝太1, 原正幸1, 前田剛志1, 金子健二郎3, 墨誠4, 立原啓正1, 戸谷直樹1, 石田厚1, 金岡祐司1, 大木隆生1 (1.東京慈恵会医科大学附属病院 血管外科, 2.東京慈恵会医科大学付属柏病院 血管外科, 3.新百合ヶ丘総合病院 血管外科, 4.埼玉循環器呼吸器病センター)

キーワード:TEVAR, Debranch Totally endovascular

【目的】弓部大動脈瘤の標準治療は弓部人工血管置換術(TAR)であるが併存疾患や再手術例などTARが困難な例においてステントグラフト治療(TEVAR)は有用と言える。今回,当院におけるTARが困難な症例に対するTEVARの術式別成績を検討した。【対象と方法】過去7年間に施行した弓部大動脈瘤(zone0~2)に対するTEVARは245例であり,そのうち115例(全てTARが困難な症例)に頸部分枝血行再建を施行した。弓部瘤に対するdebranching TEVAR(Debranch群)とchimney法,Retrograde in-situ branched stentgraft(RIBS),枝付きステントグラフトなどtotally endovascular(Endo群)の成績について検討した。【結果】Debranch群は48例,Endo群はchimney法51例,chimney+RIBS 6例,RIBS 5例,枝付き5例の合計67例。2群間の患者背景は有意差なく最大短径はそれぞれ7.0cm,6.8cmであった。Zone 0へ留置した症例の比率はDebranch群45.6%,Endo群47.8%だった。Debranch手術死亡,周術期脳梗塞はDebranch群6.3%,12.5%,Endo群は2.9%,1.5%であった(P=0.02)。また,1年・3年生存率はDebranch群67.5%,47.7%,Endo群84.0%,84.0%(p<0.05)でありEndo群で良好であったが瘤関連死回避率はいずれも92.6%で変わりがなかった。また1年・3年二次治療回避率はDebranch群100%,71.3%,Endo群91.3%,85.2%で有意差は認めなかったがchimney法はOdds比4.5とエンドリークのリスクファクターであった。【結語】性状の良い上行大動脈に留置するEndo群は脳梗塞発症の改善に寄与した。ただ,術後エンドリークの観点からchimney法よりRIBSと枝付きTEVARの方が優れており,これら術式はTARに代わる標準的治療となる可能性があると思われた。