16:00 〜 18:00
[VAS-1] 1.「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(JCS2011)」を識る-定義・分類と病態について-
JCS2011で提示された上記ガイドラインで、従来の分類から一部が改正された。脈管専門医として周知すべき「大動脈解離(AD)」の分類と病態において、今回修正された急性大動脈解離(AAD)の分類と病態について概説する。
AADの確定診断が剖検でなされることが多かった時代は、欧米の教科書には「dissecting hematoma of the aorta」と記載されていたが、現在は発症直後から「画像診断」が可能なため、偽腔の血流状態に応じた詳細な診断も可能となった。一方、病理診断でpenetrating aortic ulcer(PAU)と称される病態も提示されたが、臨床での症候や画像診断との対比に乏しく、臨床でその診断を確定することは困難である。病理診断と臨床上の画像診断とは、明確に区別するよう注意する。
AADの診療では病態に応じた病型診断が重要で、tearが不明で偽腔に血流のない病態を、我が国では「偽腔閉塞型解離」(血栓閉塞型解離:閉塞型と略)と称して、臨床上は「解離」として取り扱ってきた。本病型は、①急性期にのみ診断され、②造影CTで偽腔が造影されないこと、または経食道心エコー図で真腔と偽腔に交通のないことを確認することが診断上不可欠である(急性期画像診断が必須)。真腔と偽腔にわずかでも交通する血流があれば、通常の大動脈解離(double barrel=偽腔開存型:開存型と略)、または造影上の小突出所見(protrusion)=ulcer-like projectionを有する型(ULP型と略)として鑑別するよう提案された。すなわち偽腔の血流状態によって、AADを開存型、ULP型、閉塞型の三型に鑑別する「型分類」である。
AADを三型に鑑別する理由は、自験例も含めた文献的な検討から、急性期から偽腔に血流が無く、完全に偽腔が閉塞している「閉塞型」の転帰は極めて良好で、急性期に径拡大が無ければ、慢性期もStanford分類に関わらず、急性期からの降圧治療を継続でき、長期予後も極めて良好である。しかし、「ULP型」に観られる突出像は大動脈壁の「脆弱」な部分と考えられ、慎重な観察が必要となる。すなわち、急性期を含め慢性期も突出像の拡大・再開通などにより手術適応となった例が認められたことから、突出部位を「?状瘤」に準じて取り扱うこと(拡大傾向を指標)が必要である。「開存型」では、従来通りにStanford分類などを判定し、合併症などにも応じて治療する。尚、欧米で用いられているintramural hematoma又はintramural hemorrhage(IMH)には、ULP型や一部開存型も混在した報告もあり、本来は「閉塞型」にのみ用いるべき名称である。
今後、これら型分類の意義が検証され、さらに臨床に役立つよう期待する。
AADの確定診断が剖検でなされることが多かった時代は、欧米の教科書には「dissecting hematoma of the aorta」と記載されていたが、現在は発症直後から「画像診断」が可能なため、偽腔の血流状態に応じた詳細な診断も可能となった。一方、病理診断でpenetrating aortic ulcer(PAU)と称される病態も提示されたが、臨床での症候や画像診断との対比に乏しく、臨床でその診断を確定することは困難である。病理診断と臨床上の画像診断とは、明確に区別するよう注意する。
AADの診療では病態に応じた病型診断が重要で、tearが不明で偽腔に血流のない病態を、我が国では「偽腔閉塞型解離」(血栓閉塞型解離:閉塞型と略)と称して、臨床上は「解離」として取り扱ってきた。本病型は、①急性期にのみ診断され、②造影CTで偽腔が造影されないこと、または経食道心エコー図で真腔と偽腔に交通のないことを確認することが診断上不可欠である(急性期画像診断が必須)。真腔と偽腔にわずかでも交通する血流があれば、通常の大動脈解離(double barrel=偽腔開存型:開存型と略)、または造影上の小突出所見(protrusion)=ulcer-like projectionを有する型(ULP型と略)として鑑別するよう提案された。すなわち偽腔の血流状態によって、AADを開存型、ULP型、閉塞型の三型に鑑別する「型分類」である。
AADを三型に鑑別する理由は、自験例も含めた文献的な検討から、急性期から偽腔に血流が無く、完全に偽腔が閉塞している「閉塞型」の転帰は極めて良好で、急性期に径拡大が無ければ、慢性期もStanford分類に関わらず、急性期からの降圧治療を継続でき、長期予後も極めて良好である。しかし、「ULP型」に観られる突出像は大動脈壁の「脆弱」な部分と考えられ、慎重な観察が必要となる。すなわち、急性期を含め慢性期も突出像の拡大・再開通などにより手術適応となった例が認められたことから、突出部位を「?状瘤」に準じて取り扱うこと(拡大傾向を指標)が必要である。「開存型」では、従来通りにStanford分類などを判定し、合併症などにも応じて治療する。尚、欧米で用いられているintramural hematoma又はintramural hemorrhage(IMH)には、ULP型や一部開存型も混在した報告もあり、本来は「閉塞型」にのみ用いるべき名称である。
今後、これら型分類の意義が検証され、さらに臨床に役立つよう期待する。