日本女性骨盤底医学会 第25回学術集会

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ワークショップ

産科管理 助産

WS1 《泌尿器科領域講習》分娩周辺期での下部尿路の変化 

─無痛分娩の時代を迎え産前・産後ケアに求められる課題─

Sat. Aug 5, 2023 9:45 AM - 11:15 AM Hitotsubashi Hall (Japan Education Center Level 3)

座長:吉田 美香子、橘 大介

9:45 AM - 10:00 AM

[1A7W] [ワークショップ 分娩周辺期での下部尿路の変化 ─無痛分娩の時代を迎え産前・産後ケアに求められる課題─] 下部尿路の構造と神経⽀配 ─なぜ尿は出なくなる?─

○橘田 岳也1 (1. 旭川医科大学腎泌尿器外科学講座)

Keywords:経腟分娩、下部尿路機能

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1998 (平成10)年 北海道大学医学部医学科卒業
 同大学泌尿器科入局
2008 (平成20)年 研究留学米国ピッツバーグ大学泌尿器科リサーチスカラー
2012 (平成24)年 北海道大学病院 泌尿器科 助教

2015 (平成27)年  北海道大学病院 泌尿器科 講師
2021 (令和 3)年 北海道大学大学院医学研究院 
泌尿器科総合地域医療システム学分野 特任准教授
2022 (令和 4)年 4月 旭川医科大学 腎泌尿器外科学講座 准教授
現在に至る
いま、この抄録を読んでいる方は蓄尿をしています。我々は特に意識することなく、蓄尿して尿意があればトイレで排尿をしています。正常と定義されている排尿形態は、ヒトは1日の大部分を蓄尿して過ごし、7-8回程度の排尿をします。蓄尿と排尿という2つの相反する機能を維持するために、さまざまなコントロールが働いています。蓄尿機能として必要とされる条件は、膀胱が社会生活を送る上で十分な蓄尿量を低圧で溜めることが出来るということです。すなわち、随意的に排尿を試みない限り、膀胱排尿筋は収縮せず(不随意収縮を起こさず)、膀胱の圧力は上昇せず、尿意は自覚されるが適切な環境になるまで我慢が出来る。さらに、急激な腹圧上昇の際にも、尿道の圧力を膀胱内圧が凌駕することはないため、失禁は起きない。また、排尿機能として必要とされる条件は、膀胱内に溜まった尿が低圧で尿道を通り、残尿は生じない。すなわち、排尿時には、尿道括約筋が弛緩すると同時に膀胱排尿筋が収縮をして、尿をすべて排出するまで十分な収縮力が維持される。このような蓄尿・排尿機能を達成するためには、膀胱・尿道という下部尿路が協調運動をしない限り不可能です。そのためには、下部尿路、末梢神経、脊髄、脳といった臓器のすべての機能を活用することが必要になります。この美しく、精緻なメカニズムの解明には泌尿器科医をはじめ、解剖学、生理学、薬理学といったあらゆる分野の研究の歴史があります。
 私のパートでは、産褥の排出障害の原因と適切な管理を考えるうえで、必要な知識を簡便に解説します。苦手意識がある?と考えられる解剖と生理の概説をします、少しでも助けになれば幸いです。