10:00 AM - 10:15 AM
[1A8W] [ワークショップ 分娩周辺期での下部尿路の変化 ─無痛分娩の時代を迎え産前・産後ケアに求められる課題─] 経腟分娩後の下部尿路機能の特徴~下部尿路症状と膀胱内尿量の実態~
Keywords:経腟分娩、下部尿路症状、膀胱内尿量
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2008年金沢大学医学部保健学科卒業後、金沢大学附属病院で助産師として周産期ケアに従事。2018年金沢大学大学院医薬保健学総合研究科博士後期課程を修了。2019年より富山県立大学看護学部・助教、2023年より講師。
博士後期課程在籍中より超音波検査を活用した妊娠・分娩に伴う変化の可視化に着目。ウィメンズヘルスの観点から女性の生涯の健康を見据えた周産期のケアを推進したいと考え、分娩後の排尿ケアや助産師の超音波を活用したフィジカルアセスメントをテーマに教育研究活動を行っている。
妊娠・経腟分娩に伴う骨盤底への負荷等により、産褥早期の女性の多くが、尿意減弱や排尿困難、尿失禁、産後尿閉などの様々な下部尿路症状を経験する。その多くは一過性のものであり数日で軽快するとされている一方、症状が持続したり長期的な健康問題につながったりする可能性が指摘されている。経腟分娩後の下部尿路機能の回復において排尿ケアは重要であり、生理的な経過をたどる対象のケアを担う助産師・看護師の役割は大きい。
経腟分娩後の下部尿路症状の関連要因には、初産や器械分娩、硬膜外麻酔、分娩所要時間、会陰切開、児の出生体重などの産科的要因が以前から指摘されており、これらに加え近年では、産後尿閉の関連要因として膀胱の充満を示唆する報告もみられる。産褥早期は尿排出機能の低下により膀胱の過伸展が生じる場合があり、膀胱の充満は産褥早期において重要な評価指標と考えられる。しかし、産褥早期の膀胱内尿量や下部尿路症状の実態を前方視的に調査した研究はほとんどない。臨床においても、産褥早期は尿意減弱が生じやすいとされながらも、女性が自覚する尿意といった主観的な情報による評価が主であり、客観的に膀胱内尿量を評価してケアに活かすことは十分にされているとはいえない。慣習的に、各施設の規定に応じて分娩後一律した時間での初回排尿や排尿の促しを実施している施設がまだ多い状況である。
経腟分娩後、産褥早期の膀胱内尿量と下部尿路症状の実態が明らかとなれば、産褥早期の下部尿路機能の特徴に即した排尿アセスメントや排尿ケアに活用できると考える。そこで、経腟分娩を行う単胎妊娠の女性を対象に妊娠後期から産褥早期(退院まで)まで前方視的観察研究を行い、排尿前後の膀胱内尿量や下部尿路症状を調査した。膀胱内尿量の測定には携帯型超音波画像診断装置を用い、産褥早期の尿意減弱の有無は、女性の主観的評価ではなく、排尿前の膀胱内尿量と自覚的尿意の比較により客観的に評価した。限られた対象者から得られたデータではあるが、当日はその調査結果を示し、正常な経腟分娩であっても女性の下部尿路機能がいかに影響を受けるのか報告する。また、結果からみえる経腟分娩後の下部尿路機能の特徴から、経腟分娩を行う女性に対する生涯を見据えた排尿ケアについて考えるきっかけとしたい。
2008年金沢大学医学部保健学科卒業後、金沢大学附属病院で助産師として周産期ケアに従事。2018年金沢大学大学院医薬保健学総合研究科博士後期課程を修了。2019年より富山県立大学看護学部・助教、2023年より講師。
博士後期課程在籍中より超音波検査を活用した妊娠・分娩に伴う変化の可視化に着目。ウィメンズヘルスの観点から女性の生涯の健康を見据えた周産期のケアを推進したいと考え、分娩後の排尿ケアや助産師の超音波を活用したフィジカルアセスメントをテーマに教育研究活動を行っている。
妊娠・経腟分娩に伴う骨盤底への負荷等により、産褥早期の女性の多くが、尿意減弱や排尿困難、尿失禁、産後尿閉などの様々な下部尿路症状を経験する。その多くは一過性のものであり数日で軽快するとされている一方、症状が持続したり長期的な健康問題につながったりする可能性が指摘されている。経腟分娩後の下部尿路機能の回復において排尿ケアは重要であり、生理的な経過をたどる対象のケアを担う助産師・看護師の役割は大きい。
経腟分娩後の下部尿路症状の関連要因には、初産や器械分娩、硬膜外麻酔、分娩所要時間、会陰切開、児の出生体重などの産科的要因が以前から指摘されており、これらに加え近年では、産後尿閉の関連要因として膀胱の充満を示唆する報告もみられる。産褥早期は尿排出機能の低下により膀胱の過伸展が生じる場合があり、膀胱の充満は産褥早期において重要な評価指標と考えられる。しかし、産褥早期の膀胱内尿量や下部尿路症状の実態を前方視的に調査した研究はほとんどない。臨床においても、産褥早期は尿意減弱が生じやすいとされながらも、女性が自覚する尿意といった主観的な情報による評価が主であり、客観的に膀胱内尿量を評価してケアに活かすことは十分にされているとはいえない。慣習的に、各施設の規定に応じて分娩後一律した時間での初回排尿や排尿の促しを実施している施設がまだ多い状況である。
経腟分娩後、産褥早期の膀胱内尿量と下部尿路症状の実態が明らかとなれば、産褥早期の下部尿路機能の特徴に即した排尿アセスメントや排尿ケアに活用できると考える。そこで、経腟分娩を行う単胎妊娠の女性を対象に妊娠後期から産褥早期(退院まで)まで前方視的観察研究を行い、排尿前後の膀胱内尿量や下部尿路症状を調査した。膀胱内尿量の測定には携帯型超音波画像診断装置を用い、産褥早期の尿意減弱の有無は、女性の主観的評価ではなく、排尿前の膀胱内尿量と自覚的尿意の比較により客観的に評価した。限られた対象者から得られたデータではあるが、当日はその調査結果を示し、正常な経腟分娩であっても女性の下部尿路機能がいかに影響を受けるのか報告する。また、結果からみえる経腟分娩後の下部尿路機能の特徴から、経腟分娩を行う女性に対する生涯を見据えた排尿ケアについて考えるきっかけとしたい。