第59回地盤工学研究発表会

特別講演会

特別講演会は、一般公開して実施します。大会参加申込者だけでなく一般の方もご参加いただけます。会場での参加、およびzoomなどによるリアルタイム視聴が可能です。

開催日時
2024 年 7 月24 日(水)16:30 - 17:30

開催場所
旭川市民文化会館 大ホール

プログラム
16:30-16:35 講演者紹介

16:35-17:30 講演 「伝えるのは命 繋ぐのは命

講演者:坂東 元 氏(旭川市旭山動物園統括園長)


要旨

私たち飼育展示係の仕事・目標は,動物たちのすごさやかけがえのなさを感じてもらうこと,たくさんの命に囲まれている居心地の良さを感じてもらうこと,だと考えています。そのためには展示している動物たちが「生き生きとしていること」が大前提です。それはその動物が例えばチンパンジーがチンパンジーとして一生を過ごせるように飼育をすること,これは施設を考える際にも日常の飼育でも常に最優先に考えなければいけないことです。観てもらうのは「生活の営み」つまり生きている命を観てもらいたいし,命をとおして伝えることが大切なのだと考えています。動物は,自分がすごい能力を持っていると思っているわけではありませんから,私たちがその「すごい」を見つけて,そのすごい能力を発揮できるように工夫をし,飼育下だから初めて可能なアングルや距離で観てもらえるようにと考えています。入園者数は結果であって,目標ではありません。動物園は「観てもらうための施設」ですからたくさんの人に来てもらうことが大切なことではありますが、入園者数を追うと動物が道具になってしまします。 最近,「今の人気の原点はどこにあったと考えますか」とよく聞かれます。思い返して考えると,ほんの二十数年前まで旭山は時代に取り残されたような,動物を見られるだけで価値があった頃のままの狭い檻の中で,動物を飼育していました。来園者はライオンやヒョウが寝ていると「つまらない」から石や食べ物を投げ入れる,傘でつつく,大きな音を出してビックリさせる,など日常茶飯事でした。僕たちは自分の大切なものをけなされているようで,すごく悔しい思いをしていました。でも施設はどうしようもありませんでした。せめてもの思いでガイドを行うなど展示方法の古さを口で補ったり,手作りで看板を作ったりしてどうにかして姿形の奥にあるすごさ,素晴らしさを伝えようと努力をしていました。でもよく考えてみると,ライオンは寝ることも特徴的な習性であり能力です。その特徴を発揮している「寝ている姿」がつまらなく見える,このことは動物を観てもらうための動物園が絶対にしてはいけない見せ方なのではないかと,むしろこのままではやめてしまった方がいいのではないかと思い始めていました。再整備が決まったとき,ライオンやヒョウにいかに気持ちよく昼寝をさせるか,そしてその姿を来園者に気持ちよく感じてもらえるかをテーマに考え「もうじゅう館」を建てました。この「もうじゅう館」の成功が以後のぺんぎん館,オランウータン舎,ほっきょくぐま館,あざらし館、チンパンジーの森、オオカミの森などにつながっています。旭山動物園には「珍しい動物」はいません。どんな動物も等しく自然の中で生きていてみんなすごい能力を持ち素晴らしい生き物たちです。絶滅危惧種、希少種だから価値があるわけではありません。むしろ今は普通の動物たちの素晴らしさを伝えることが、未来を考えるとき大切なことだと考えています。コアラがなんだ!ラッコがなんだ!負けず嫌いなところがあって「今に見ていろ」とずっと思っていたのも事実です。しかし「伝える側」があたかも動物の価値に差があるような見せ方をしては,絶対にいけないと思います。さらに「つまらない」ではいけないと痛切に感じています。いかに素晴らしい取り組みを行っていても,対象が「つまらない」ものに対しての興味は先につながらないし,取り組みも評価されません。「ありのまま」に素晴らしさを感じ価値を見つけ、自然の大切さに気づいてもらうこと、そして大切なものを守るのは人間の習性です。そのことが実現できたら、きっと今とは違う未来が見えてくるはずです。ヒトだけではなく地球上すべての生き物が共生できる未来のために動物園ができることは何か?常に自問自答を忘れてはいけないと考えています。

講演者近影


坂東 元(ばんどうげん)
旭山動物園 統括園長
ボルネオ保全トラストジャパン理事
 

参加費

無料

参加方法
学会会員だけでなくどなたでもご聴講いただけます。事前申込みは不要ですので、会場に直接お越しください。なお、zoomなどによるリアルタイム配信を予定しています。詳細は、後ほどこのサイトでお知らせします。