第69回日本病院学会

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シンポジウム

シンポジウム8
多職種連携で行うタスクシェアリング強化・時短への取り組み

Fri. Aug 2, 2019 1:30 PM - 3:00 PM 第4会場 (中ホールA)

座長:
栗原 正紀(一般社団法人日本病院会 理事/一般社団法人是真会 長崎リハビリテーション病院 理事長・院長)
浅香 えみ子(獨協医科大学埼玉医療センター 看護副部長)

 医療のあり方は病院単位の構造から地域と連動した構造にシフトし、この医療サービスの受給者のニーズは益々多様化している。この対応は、個々の職種や病院という範囲を超えた対応を必要としている。このような待ったなしの状況に置かれた病院は働き方改革の誘導のもと、いよいよ具体的な策を持つことが迫られている。
「タスクシフティング」つまり、業務の移管と「タスクシェアリング」業務の共同化は、チーム医療のあり方そして医療界における働き方改革に繋がる具体的方策の一つとして注目されてきた。5年後の実施に向けた医師の働き方改革の始動がこれに現実味を与えている。医療を提供する側が疲弊することなく、医療従事者の持つべき本来のプロフェッショナリズムを守り、高める上で期待が寄せられている。
 改革するべき働き方の最重点に長時間労働に対する「時短」があげられる。「時短」は医療者の健康管理を介して医療者自身の健康保持と健康な医療者が支える医療の確保を可能にする。そこには、増大する医療ニーズを前提におくことから、医療の生産性向上の課題に向き合う必要性が生じてくる。医療業務を医療職種間で押しつけ合っていても成果がないことは、これまでのチーム医療のあり方から見えている。すなわち、医療業務の全体量を削減し、成果は維持・向上させる視座をもつ必要性がある。方向性は「患者にとって良いこと」を基軸に無駄を削減し益を生み出すものである。
 ここには、専門職者の特性を加味する必要がありプロフェッショナルリズムの尊重が求められる。現行のチーム医療はこの視点において、個々の特性を強く主張したものであったが、これからのチーム医療は職種の特性から“したいことをする”のではなく“必要とされることをする”協調型のチーム実践が必要となる。プロだからこその守備範囲において、周辺業務であっても対応する働き方へシフトする必要がある。専門性を自らが主張し獲得するのではなく、求めに応じて提供する方向性である。あくまでも「患者にとって良いこと」に繫がることが前提である。それぞれの専門性が個々の患者にとって最良な形にコーディネートされ提供される。専門性は職種間の相互の尊重の中から認知され強化されていく方向性が良いのではないか。そのためには、他職種の専門性を相互に理解することが重要になる。
 このような視座が生産性の高い医療をもたらし、そこに機能するタスクシフティング、タスクシェアリングが医療者の働き方を改革に導くものと考える。そして、新たな職種が加わったにしても専門性の衝突ではなく道が開かれるものと考える。医療の多くが医師の指示のもとに構造化されている中で、医師の働き方を改革することは、医療職者全ての働き方を変えることに繫がる。全ての医療職者の業務を対象にするために、改めて多職種連携のあり方から問い直す。

指定発言
末永 裕之(一般社団法人日本病院会 顧問/小牧市民病院 病院事業管理者)
有賀  徹(独立行政法人労働者健康安全機構 理事長)

コメンテーター
木澤 晃代(日本大学病院 看護部長)
本多 哲也(医療法人 横浜柏堤会 戸塚共立第1病院 事務長)