[口演34-1] 陰部清拭用ワイプの導入が朝のケア時間に及ぼす影響
ー患者との時間の創生を目指してー
【背景】看護サービスの質を向上させる為には、看護業務の効率化をはかる必要があると言われている。A病院では、午前中に検温や朝の保清ケア、退院対応、手術患者の対応などの業務が集中していた。特に朝の保清ケア(朝のケア)は、全身清拭、更衣、陰部ケア、オムツ交換と多岐に渡り、ケアに費やす時間と業務負担が課題であった。【目的】朝のケアに陰部清拭用ワイプの導入する事で、朝のケア時間に及ぼす影響を明らかにしたいと考えた。【実践内容・方法】対象は、202X年8月から202X年12月までの間、A病院のA病棟、B病棟、C病棟の3つの看護単位に入院した患者(延べ入院患者数15,149人)、及びそのスタッフ(看護師と補助者併せて延べ329人)とした。朝のケア時間の集計は、実績記入法とし、各病棟スタッフが毎日朝のケア開始から終了時間までを集計シートに記載し、要した時間を朝のケア時間とする事とした。本分析に於いては、所属機関の管理会議の承認を得て、患者が特定されない様配慮した。朝のケアの内、陰部ケアに関しては、介入前を石けんと微温湯を用いた陰部洗浄(以下陰部洗浄)のみとし、介入後は陰部清拭用ワイプの導入とした。そして、その介入前と後を2群とし、比較対照研究を行った。介入後は、陰臀部等の皮膚に異常がない場合は、原則陰部清拭用ワイプの使用を推奨し、必要に応じて陰部洗浄も行える事とした。分析には、Man-Whitney U検定を行い、両側検定で有意水準5%とした。【結果】A病棟に於ける朝のケア時間は、介入前107.1±26.9分(8月)、介入後73.9±25.3分(9月)であった。結果、介入後の朝のケア時間は、有意に短縮した。そこで、B病棟、C病棟でも陰部清拭用ワイプの導入を拡大した。そして、全調査期間に於ける各病棟の介入前の朝のケア時間は、A病棟107.1±26.9分(8月)、B病棟115.2±22.4分(8-9月)、C病棟146.9±24.6分(8-9月)であり、介入後の朝のケア時間は、A病棟77.0±20.2分(9-12月)、B病棟93.9±22.9分(10-12月)、C病棟130.4±27.9分(10-12月)であった。その結果、A病棟、B病棟、C病棟の3つの看護単位に於いて、介入後の朝のケア時間は、介入前と比較して有意に短縮した。【考察】一般的に陰部洗浄は、微温湯で流す、石けんの泡で洗浄する、石けんを流す、残った水分を拭き取ると言った工程が必要である。しかし、陰部清拭用ワイプでは、有機物に界面活性成分を浸透させる、拭き取ると言った工程となる。A病院では、陰部清拭用ワイプの導入が、朝のケア時間の短縮につながった可能性が示唆された。【実践への示唆】朝のケア時間短縮は、看護や医療の質向上の最終的な目的ではない。業務効率化によって捻出された時間によって、患者との時間を創生し、私たちの看護の質や医療の質を向上させる事が今後の課題であると考えている。