[口演34-2] 陰部清拭導入による影響と効果の検証
【背景】カテーテル関連尿路感染(CAUTI)は医療関連感染の12%以上を占めており、カテーテル挿入時の清潔操作や閉鎖式システムの維持など病原微生物の侵入門戸に対応した対策がある。特に外尿道口周囲の陰部清潔保持は毎日の実施が推奨されているが、陰部ケアを必要とする患者は増大しており、安全かつ簡便な陰部ケアの実施が求められている。A病院では、新たに陰部清拭用ワイプシート(以下ワイプシート)を導入し、陰部ケアの方法を変更し、患者への影響や看護師の業務負担について検証を行い、一定の結果が得られたため報告する。【目的】ワイプシート導入による患者と看護師の業務の影響や効果を明らかにする。【実践内容・方法】ワイプシートを導入した前後で実施調査を行った。1前後計4カ月間のCAUTI発生率 2準備・実施・片付けの時間の変化 3廃棄物の量 4看護師へのアンケートを行い検証した。院内の導入前に動画視聴研修と各病棟での実演研修の両方を実施した。2、3は実際に病棟での現状調査を行った。対象者に参加の自由意思、匿名性保持について説明し同意を得た。【結果】CAUTI発生率に関して導入後の上昇はみられなかった。陰部ケアに係る時間は準備・実施・片付けとも3分の1程度の時短となり、廃棄物量も減少した。アンケート結果では、導入による患者の反応は「特に変わらない」が89%と最も多く、「良い反応」は8%「悪い反応」は3%だった。ワイプシートへの変更は67%が「抵抗があった」と答えた。理由は「患者さんがすっきりしないのではないか」「洗浄することできれいになると思う」「お湯で洗い流してあげたい」という回答が多かった。事前研修は動画、実演ともに9割が「役に立った」という回答で、スムーズに導入に至った。導入2カ月後、88%が今後も使い続けたいと回答した。【考察】介護施設での耐性菌伝播が増え院内への持ち込みは増加している。従来の陰部洗浄手順には持ち込まれた微生物汚染を広げるリスクがある。Stoneらの研究ではワイプシートを使用しCAUTIの発生率が低下することが示されている。海外では一般的な方法であるが、A病院では洗い流す清潔観念があり、陰部ケアでの微生物の伝播は問題視していなかった。今回ワイプシート導入によるCAUTI発生率は変化しないことが裏付けられた。また事前研修によりスムーズに導入できた。準備・実施・片付けにかかる時間は平均1回あたり9分の短縮となり、A病院では1日全病棟合わせ50人程度の陰部ケアを行っており、1日あたり8時間の削減になった。またシーツが濡れてしまうなど患者負担の軽減にも繋がった。従来の観念に捉われず費用対効果を試算し戦略的な感染対策を進めていくことが重要だと考える。【実践への示唆】COVID-19対応をはじめ過酷な業務抱える看護師の負担が減ったことは、従来の看護技術を見直し時代に則した看護提供を検討していくことに繋がる。