第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演34群 排泄ケア②

Sat. Sep 28, 2024 3:00 PM - 4:00 PM 第6会場 (大会議室A4)

座長:印東 真奈美

[口演34-3] 陰部ケアから考えるSDGsについて

南口 真帆, 山下 綾華, 小畑 由貴, 中村 明世, 榎谷 美智子, 籔中 直美, 小津 有輝, 大野 史郎 (奈良県立医科大学附属病院)

【背景】 A病棟では、感染性医療廃棄物は80Lの段ボール(以下段ボール)に入れて破棄している。段ボールは大きさ80L、使用後の1箱の重さは平均6.6kgであり、1日に約10個、1ヶ月あたり300個を使用、破棄しており、重さにすると約2tである。日常的に感染性廃棄物が発生するケアの一つとして、 A病棟では1日に約12人の陰部ケアを実施している。従来から陰部洗浄を行ってきたが、数年前より院内感染防止対策委員(以下ICT)より、陰部洗浄(以下洗浄)と陰部清拭(以下清拭)の洗浄度に差はないことから清拭を推奨されていた。今回陰部ケアの方法を変更することでゴミの削減につながるのではないかと考えた。 【目的】 洗浄・清拭実施後の廃棄物量を比較し、清拭に移行することで減量できる廃棄物の量および廃棄コストを推定する。その結果を病棟スタッフ間で共有し、日々の陰部ケアの方法を見直し、SDGsの参画の第一歩を目指す。 【実践内容・方法】 蛍光塗料を含んだ模擬便を作成し、陰部モデルを用いて洗浄・清拭を各ケア14例を行った。手順・方法を統一化するため院内の看護手順を研究メンバー5名で遂行した。使用する物品(模擬便90g・オムツ100g)はすべて基準を統一し検証を行った。ケア後の廃棄物量の比較を行った。 【結果】 洗浄では準備物品がエプロン、手袋、ゴミ袋、陰部洗浄ボトル、泡石鹸、使い捨てウェットタオル1枚に対し、清拭はエプロン、手袋、ゴミ袋、使い捨てウェットタオル5枚と物品の数が少なかった。また洗浄では廃棄物量が1回あたり約539gに対し、清拭は廃棄物量が1回あたり約345gであった。 【考察】 洗浄から清拭に移行した際のA病棟の廃棄物量を推定すると、1か月あたり約70kgで年間840kgの削減となることが考察される。これはA病棟での感染性医療廃棄物全体の約1割の削減となり、段ボールに換算すると月あたり約10.6箱、年間あたり約127.2個の削減で、コスト換算では年間約142,748円程度の削減が見込めることが分かった。また、洗浄では、陰部ケア実施時に発生したゴミだけでなく、ベッドパンウォッシャーでボトルを洗浄する際に洗浄剤や水を使用し、準備や片付けにおいても使用する資源が多く、水質汚染にもつながるリスクがある。これらのことより、今後、洗浄から清拭に移行していくことで大幅な廃棄物量削減やコスト削減につながり、SDGsの第一歩となる活動ができると考える。 【実践への示唆】 今回視覚的に得られた結果を病棟全体・院内全体に周知していくことで日々の陰部ケアの方法を見直していく必要がある。また、陰部ケア以外にも日々使用している物品やケアに使用したゴミの量、それに伴うコストの見直し意識を高め、今後もSDGsの参画に取り組んでいきたい。