第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演41群 周術期の看護①

Sat. Sep 28, 2024 4:30 PM - 5:30 PM 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:中村 裕美

[口演41-1] 手術室入室時のホットバスタオルの導入と運用の課題

~術後訪問での感想の振り返り~

蔵谷 和代, 阿部 瑞恵, 松井 弘美 (富山県立中央病院)

【背景】A病院では、202X年7月から術中低体温予防目的でホットバスタオル(以下HBとする)を導入した。麻酔導入前最低10分間の、患者加温で周術期低体温は予防できると言われている。筆者は、歩行入室開始時寒さを訴えた患者にHBを使用した時「ホッとした」と言われた経験がある。足浴等の保温には、副交感神経の亢進や、リラクゼーション効果があると言われており、HB使用により、低体温予防以外の心理的な安心感につながるのではないかと考え取り組んだ。【目的】HBを使用した患者への術後訪問記録から今後のHBの運用の示唆を得ること。【実践内容・方法】202X年6月~202X 年7月、202X 年12月~1月の期間手術を受け、歩行入室で入室し、術後訪問を行った患者のうち、15歳未満の小児と術前の記憶が全くないと答えた患者を除く507名を対象に術後訪問記録内容を後方視的に集計した。HBは、42℃の保温庫に6時間以上保管し、使用した。HB未使用群と使用群の入室時と気管内挿管直前の脈拍の比較と、「手術室入室時に強い不安を感じていたか」、「HBが暖かいと感じたか」「HBでホッとした気持ちになったか」のHB利用の感想3点について質問し、集計した。院内ホームページに掲載された包括同意を得て、研究が実施されることについて、研究対象者が拒否できる機会を保障し、個人情報を含まないデータのみ使用した。A病院倫理委員会の承認を得た。 【結果】対象者の年齢は、平均63歳、最高94歳、最低16歳、男性203名、女性365名であった。HB未使用群は142名、使用群は365名であった。術前訪問実施者は257名、入室時寒さを感じた者は75名、HBでホッとした者は279名、入室時強い不安を感じていた者が246名であった。HBの有無と入室時の脈拍の平均の比較、HBでホッとした気持ちになった者と、そうでない者との脈拍の平均の比較では、それぞれ有意な差は認められなかった。入室時強い不安を感じていた者(245名)の脈拍(79.4±16.7)は、そうでない者(247名)の脈拍(74.2±14.0)よりも有意に多かった(p<0.01)。また、自由回答には、「HBがあるのとないのでは、全く安心感が違う、安心した」、「看護師さんの声かけに安心した」、逆に「緊張しすぎてわからなかった」、「暑かった」という意見があった。【考察】温熱刺激により、交感神経系が抑制され、血管緊張低下による血管拡張が生じる(神沢1991)と、リラクゼーション効果が検証されている。今回、HBの有無と患者のHRに有意な差は認められなかった。今後は、HBの至適な温度や、保温の持続時間の検討等、活用方法に検討を要する。【実践への示唆】HBが安心感を高めるケアの主体としてではなく、さまざまなケアとの補強として用いることができる。HBをかけたタイミングで、タッチングや優しい声かけ、安心を与える関わりを総合して提供できるケアを標準化し、新人看護職員、転入者への教育に取り入れることが今後の課題である。