[口演45-2] 本来業務に集中できる働きやすい職場環境の実現に向けた取り組み
病棟看護師業務のタスクシフティング・合理化・効率化
【背景】少子化が更に進む中、慢性的な看護師不足は深刻化しており急性期病院であるA病院においても例外ではない 。特に病棟看護師は本来専門職が担うべき業務、看護師でなくとも担える業務も行っていることで煩雑化しており、本来の観察やケアに時間を割けずにやりがいを失ったり疲弊して離職する場合もある。そこで看護師が働き続けやすい職場環境を目指し、病棟看護業務の負担軽減のための改革として202X年より他職種へのタスクシフティング(以下シフト)、合理化・効率化に取り組んだ。【目的】本来の観察・ケアに集中できる職場環境を提供する【実践内容・方法】他職種へのシフトは病棟受持ち看護師の日勤業務をリスト化し、すでにシフトしている業務、今後シフトしたい業務について関係全職種と協議を重ねシフトした。合理化・効率化 は、量や時間が多い病棟業務のうち看護記録関連について自動バイタル入力機器及び看護記録パスシステムを、体位変換業務について自動体位変換機能付きマットレス・ベッドを導入した。本研究はA 病院倫理委員会に諮り、研究結果の評価に使用するデータは個人の特定、不利益が生じる内容ではなく審査対象外との承認を得た。【結果】薬剤業務は病棟薬剤師、栄養管理業務は栄養士、採血・輸血業務は臨床検査技師、看護ケアは看護補助者等にシフトした。その他のシフト等も合わせ日勤業務量の56%、患者1人当たりの業務時間を47%削減できた。取り組み前後で転倒・転落数は月平均6.6件、ドレーン事故は15件、薬剤事故は5.4件減数した。多忙・業務負担等が理由の退職は取り組み前が平均13人/年、後は平均5.5人/年に減数した。【考察】複数要因が関連していると考察するが取り組み後は医療事故が減数しており、観察・ケアに費やす時間の確保、集中できる環境作りに繋がったと推測する。特に看護師の指示の下看護補助者が実施可能な直接ケアである口腔ケア、食事介助、オムツ交換等をシフトしたため負担を大きく軽減できたと考える。本来業務においても叙述式で記載する経過記録には多くの時間を要している。看護記録パスシステムは疾患・状態毎に必要な観察等の項目が標準化されている。叙述記録をほぼ要さずチェック式記録のため、病棟看護師から記録し易いと好意的意見が多く聞けている。 コロナ禍を背景に人員不足の影響等があり残業時間の評価には至っていない。【実践への示唆】思い切ったシフトと合理化・効率化により病棟看護師の負担を軽減できた。しかしシフトは他職種の人材増員と理解・協力が不可欠である。更に医療機器やデジタルツール導入には高額の費用が係り 、システムの活用には月額費用が係る。看護部主体のみならず病院経営層等が主導しなければ取り組みの実現は難しい。 今後の課題は他職種にシフトした業務の合理化・効率化、そして看護師が本来の業務に注力することで看護の質の向上、 看護の専門性を向上することである。