[口演45-4] 看護師が専門性を発揮するためのタスク・シフト/シェアの効果
【背景】 日本看護協会から「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド」が公表(2022年)された.A病院では看護師の業務量調査を実施しており、その結果,時間を要している業務が明らかになった.B病棟においても,業務内容を整理し看護補助者や医療事務職(以下,クラーク)と連携協働を進めていくことで,看護師の業務負担の軽減と超過勤務の削減を含めガイドラインを活用しながら業務効率化を図りたいと考えた.【目的】クラークならびに看護補助者の業務を整理し,看護師が専門性を要す業務に専念できる.【実践内容・方法】B病棟の看護師(22名)からタスク・シフト/シェアが可能な業務について質問紙調査を行った.また,クラーク(2名)と看護補助者(3名)からは,各業務の中で強みとしていることを中心にインタビューを行った.その結果からタスク・シフト/シェアが可能な業務を抽出し,各手順書を作成した.A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た.(承認番号2023-017)タスク・シフト/シェア実施後に看護師には質問紙調査,クラークと看護補助者には,実施後の思いをインタビューし評価を行った.【結果】看護師からクラークへタスク・シフトが可能な業務は,入院時の書類関係,入院時のオリエンテーションなどであった.看護補助者にタスク・シェアが可能な業務は,点滴用のかご拭き,備品薬の残数確認などであった.クラークは,患者対応や他部署との連携や患者への心配りを強みとしていた.看護補助者は,入浴の介助や車椅子への移乗など,患者への直接的なケアを強みとしていた.クラークと看護補助者の業務と看護業務との相互連携を図りながらそれぞれの不安や負担,さらに不満が大きくならないように調査結果を用いて丁寧に説明を行い,手順書を協働作成した.実施後,9割の看護師からは専門性を発揮できる業務に取り組むことができたとの回答が得られた.さらに,自由記載には「より患者の部屋に行く回数が増えたと感じる」との意見もあり,看護計画の評価や看護サマリーの作成が業務時間内に実施できるようになった.【考察】看護業務のシフト/シェアを可能にするためには,一方的に業務を委譲するのではなく,他職種の業務量や業務への強みを知ることにより,業務を受ける側がやらされ感や押しつけになっていないように感じること,さらには,やりがい感に繋がるように関わる過程が重要であると考える.今回,他職種の強みを知り,活かす業務を選択することで役割感を持つことに繋がったと考える.この取り組みから,同チームの一員としての自己有用感は,職種としての存在意識や価値を高めることになった.この取り組みを通して,副産物として,看護業務から看護サービスへと提供できる時間も確保できた.【実践への示唆】タスク・シフト/シェアは,それぞれの職種の有用感を大事にしながら進めていくことが肝要であると考える.