第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演45群 看護職・多職種との協働②

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM 第6会場 (大会議室A4)

座長:深尾 亜由美

[口演45-5] 組織変革プロセスに基づく多職種へのタスクシフト・シェアの推進

救急搬送受入れの体制強化プロジェクトの成果を振り返って

奥井 一恵 (江別市立病院)

【背景】A病院での救急搬送受入れは各診療科で診療科医師・看護師のみで対応している。「対応するスタッフの確保困難」が理由の不応需事例への対策と、救急情報連携システム導入により予測される救急搬送要請数の増加に対応する必要があり、病院到着から入院までに発生する看護師業務と所要時間から、救急搬送受入れの体制を強化するための課題を明確にした。看護師以外の多職種が担える業務を、看護師からの連絡なしに、ぞれぞれの職種が最適なタイミングで効率的に介入する仕組みを作り、全体の所要時間短縮と対応するマンパワーの確保するプロジェクト(以下「プロジェクトQ」)を立ち上げた。結果、不応需事例の減少と救急搬送受入れ数が増加し、地域の救急医療へ貢献と病院経営に寄与することができた。【目的】取り組みの過程をコッターの変革プロセスに準えて振り返り、タスクシフト・シェア推進における示唆を得たので報告する。実践報告にあたり所属施設長の承認を得た。【実践内容・方法】1.危機感の共有:体制強化の必要性と課題を明確化し、経営会議で「プロジェクトQ」立ち上げを組織に提案し、承認を得た。各職種それぞれにプロジェクトの目的と方法を説明し、多職種が介入する必要性について理解を求めた。⒉変革主導チームの編成:プロジェクトメンバーには、ミドルマネージャー的人材の人選を依頼し、チームを構成した。3.ビジョンと戦略を生み出す:チームを招集しビジョンを共有した。救急搬送受入れ時の業務内で各職種の専門性の発揮が所要時間短縮に繋がる業務と、介入の効果的なタイミングについて検討を行なった。4.ビジョンの周知徹底:プロジェクトメンバーから各職種・部署へ周知を依頼した。5.従業員の自発を促す:始動後、スタッフからの不満や要望も含め聞く機会を設け、スタッフの意見を踏襲し業務内容の調整を行った。6.短期的成果の実現:救急受入れ増・入院患者増の成果を組織で共有した。7.成果からの変革の推進:プロジェクトメンバーで成果を共有し、課題から改善策の話し合いを行った。8.文化の定着:組織の次年度目標に救急車受入れ体制の強化が明記され、継続した取り組みとして位置付けられた。【考察】看護師対多職種という構図を作り出さない事を常に意識し、看護師の負担軽減が目的という発信をしなかった事、組織の役割を果たすために救急搬送受け入れの体制強化が必要で、多職種・他部署の介入が患者にとってメリットが大きい事を強調し理解を求めた事、チームメンバーにミドルマネージャー的人材を巻き込み、生まれた成果を組織に承認してもらえた事が、タスクシフト・シェアの推進に繋がった。【実践への示唆】タスクシフト・シェアの推進には、互いの職種の専門性への理解と互いの業務負担に対する理解を示しながら、各職種の専門性が発揮され、双方の対立関係を最小限にコントロールする戦略的アプローチが重要である。