[口演46-1] 複数の健康課題を持つ患者への看護
問題思考型からレジリエンスに着目したケア
【背景】壮年期における患者が慢性疾患で入院となり、社会復帰を目指すためには、入院中から疾患の理解を深め自立した生活を送るための介入が必要不可欠となる。また、患者が自ら病気を受け入れ、向き合っていくための過程に看護の役割は大きい。今回の事例では、慢性疾患の受容過程に加え、引きこもり生活、家族への依存など社会的要因が疾患を受け入れる過程に困難を生じさせた。看護師は問題解決思考、リスク回避思考になりがちで患者の弱みだけに視点が向きやすいが、患者の強みに着目して介入したことで患者の行動変容に繋がったため、その過程をここに報告する。【目的】 複数の健康課題を持ちながらも病気と向きあい、患者の行動変容につながった要因を明らかにする。【実践内容・方法】1.期間 202X年9月〜202X+1年2月2.研究対象 慢性疾患を持つ40歳代前半の男性3.倫理的配慮 A病院の看護部倫理委員会の承認を得た (倫理審査結果通知番号 K2402-1号) 本研究の参加者には、研究目的、方法、参加は自由意志で拒否による不利益はないこと、及び、個人情報の保護について文書と口頭で説明を行い同意を得た。4.内容・方法 入院前から仕事を辞め、引きこもる生活を送り、生活全般は母が支え、家族に依存していた。抑うつ、寝たきり状態に加え、栄養バランスが偏った食生活を送り心不全で緊急入院となった。今回の入院で筋力は更に低下し、自律神経障害を認め、起立性低血圧が続き、セルフケア能力の回復に時間を要した。A氏の社会的背景、依存的態度、筋力低下などセルフケアを阻害する要因にどう関わるかカンファレンスで検討し、抑うつ状態であった患者が自身を承認できるよう自己効力感を高める関わりを行った。A氏には従来から社会的外向性やユーモア、興味関心の多様性など複数の強みがあることに着目し、強みを引き出す介入をした。患者が持つ外向性、興味関心を刺激し、ADL拡大とセルフケア能力の回復に向けて、自己の課題を認識できるよう促した。【結果】患者の強みを引き出す介入を行い、依存的であった患者が「塩分に注意したご飯にします。」「退院後は友人を誘って散歩に行きます。」「タバコはもう吸わないです。」などの発言や自らリハビリを行い、自宅での過ごし方のイメージが持てるようになり社会復帰に向けた行動に変わった。【考察】 患者が「困難をしなやかに乗り越えて回復する力」を発揮するためには、その人が持つ特性にも着目する必要があるといわれている。今回の事例のようにカンファレンスで必要なケアを検討した結果、患者の特性に合った指導内容を行えた。強みに着目した関わりを行ったことで健康障害を乗り越える患者の回復力を支援できたと考えられた。【実践への示唆】 複数の健康課題を持った患者が回復力を高め健康状態を保ち、QOLを維持するために、患者の強みに着目した関わりが求められる。