第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演47群 能力開発・人材育成①

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (中会議室E1+E2)

座長:早川 ひと美

[口演47-5] 急変対応に対する教育の効果について

橘 則子, 折原 未亜子 (北九州総合病院)

【緒言】急変への対応は新人看護職員が卒業時に習得が見込めない技術であり、卒後3年目の看護師においても60%以上が演習でできるレベルにとどまっている。看護師経験年数に関わらず、看護師のレディネスに差があることを認識し、各施設で教育プログラムの確立が求められている。そこには、エキスパート看護師をロールモデルとした教育の実施が有効であることから、指導者の育成が必要であると考えた。また、急変対応に対する教育方法について明らかにしたものはあるが、それを部署で活用することでどのような効果があるのかを明らかにしたものはないため取り組んだ。【目的】指導者レベルにある看護師に急変対応に対する実践的な教育を行い、教育後の実践での活用状況とその効果について明らかにすることである。【方法】A病院の指導者レベルの看護師25名を対象に講義とシミュレーションを組み合わせた4回のシリーズ研修を実施した。その後、実践での活用状況を把握するために、2及び、4段階評定法を用いて質問紙調査を行った。質問内容は、基本属性、部署での活用状況と実践しての効果についてである。実践しての効果については自由記述とした。分析方法については、質問紙の項目ごとに単純集計を行い、自由記述の内容を抽出し分析を行った。この研究は、A病院倫理委員会の審査承認を得て行った(第令和5-23号)。【結果】対象者数25名(回収率100%)から回答を得た。対象者の平均年齢は35歳(SD=8.1)、看護師経験年数は平均12.5年(SD=7.2)であった。最も役立てられた場面はスタッフへの指導や教育の場面で、実践しての効果については、23名(92.0%)が効果が「あった」と回答していた。対象者自身の効果としては、知識・技術だけでなく精神面への効果が得られた。部署スタッフへの効果としては、急変に対する意識が向上し苦手意識が低下したことにより、実際の場面での対応が可能になっていた。【考察】研修での学びを実践しての効果は、対象者自身と部署スタッフの両方にみられた。これは、急変対応に対する教育を指導者レベルの看護師に実施したことにより、それが対象者の実践能力の向上や意識の変容、不安の軽減にもなった。また、ロールモデルとしての役割を理解しそれを果たすための行動が取れたことで、それが部署スタッフの実践能力の向上にもつながった。これら対象者の実践での効果は、カークパトリックの4段階評価法のレベル3の行動変容だけでなく、レベル4の業績への成果にもつながっていた。【結論】対象者を絞り実践的な教育を行ったことで、対象者自身の行動変容と、それが部署の急変対応技術の向上にもつながった。しかし、対象者の人数が少ないため結果を一般化することはできない。今後は、指導できる人材を増やすための教育とモニタリング・評価を継続すると共に、その人材を活用した教育プログラムや方法の検討が必要である。