[口演47-4] 医療現場におけるスピーチロックの現状と教育的課題
【研究背景】 高齢化にともない、認知症や身体抑制が社会問題となっている。そこで文献検索したところ、身体抑制については、厚労省の明確な取り決めがある。しかし、言葉による抑制(以下、スピーチロックとする)については、明確なものがない。スピーチロックとは、指示や禁止するような言葉で心身の動きを封じ込めることを言う。ケアする側の倫理的配慮や知識不足から、スピーチロックが起こっているという報告もあり、文献からも、スピーチロックに関しては、病院での先行研究がほとんどないことがわかった。しかし、スピーチロックの弊害は、精神的な苦痛・行動意欲の低下・病状悪化・信頼関係の悪化など、大きな療養上の問題となる。今まで、医療現場では、あまり問題にされなかったスピーチロックに関して、現状と課題を明確にすることにより教育的課題を明らかにしていく。 【研究目的】 医療現場における患者対応場面のスピーチロックの現状と教育的課題について明らかにする。 【研究方法】1.研究デザイン:アンケート調査(先行研究や現場の会話を基にスピーチロックになると考えた独自の例文28項目 例:ちょっと待って下さい、そんな事しないで下さい 等)による量的研究 2.研究期間:202X年4月~9月 3.研究対象者:A病院に従事している看護部職員153名(研究者を除く)4.データ収集方法・分析方法:202X年4月~5月アンケート実施、マンホイットニー検定 5.倫理的配慮:書面で研究目的、方法、個人情報の保護、研究不参加や中断を選択する権利があり、参加しなくても不利益を生じないことを文書で説明し、回答の返却により同意を得た。【結果】アンケート回収率98%(150名が回答)、研究目的に沿って有資格者、経験年数、老年看護学の学習・倫理的研修の参加・認知症についての院外研修参加の5項目をマンホイットニーを用い検定した。A病院では看護師、介護士の80%がスピーチロックと認識しているが、教育背景・学習経験による相関関係は低かったが、経験年数による感受性の違いがあった。【考察】①研修参加の有無とスピーチロックの認識に統計学的有意差はなかった。②研修参加の有無に関わらず、スピーチロック28項目のうち、80%をスピーチロックであると認識していた(白浜・2007)経験年齢10年以上が60%を占める集団であることから、現場での積み重ねがスピーチロックに対する高い認識になった。認知症研修に参加した職員ほど、スピーチロックに対する認識が高い傾向が見られた。【結論】今後の課題としては、倫理的感受性を高めるための看護・介護場面を題材とした学習機会を設け、職員間で意見交換ができる環境をつくることが効果的な学習機会であること、更に言葉だけでなく、身体的抑制・心理的抑制にも配慮し、相手を尊重する姿勢が重要である。【引用参考文献】・白浜雅司:高齢腎不全患者の透析拒否の対応,日本内科学会雑誌 vol96 No2,p181,2007