[口演48-5] リーダー看護師の臨床判断の思考プロセス
クリティカルケア領域のせん妄患者の看護
緒言集中治療後症候群の障害であるせん妄発症のリスクは、極めて高く早期介入が必要となる。しかしクリティカルケア領域におけるリーダー看護師のせん妄の看護に対する臨床判断の研究報告は行われていない。そこで、リーダー看護師のせん妄の看護における臨床判断の思考プロセスを明らかにすることとした。目的クリティカルケア領域におけるリーダー看護師のせん妄の看護の臨床判断において、どのような思考プロセスをたどっているのかを明らかにする。方法本研究では,研究同意が得られたリーダー看護師に、アンケートを行い、アンケートから得られたデータをSteps for Coding And Theorization(以下SCAT)にて分析を行った。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(2023-③)結果タナーの臨床判断モデルを用いて分類した。背景コンテクスト・関係性のフェーズでは、「経験知からの看護」は「知識と経験からの気づき」、「患者の些細な変化への気づき」である。気づくのフェーズでは、「データの適切な解釈による仮説」は「患者を理解するための情報」の合目的な収集や「患者の包括的状況の認識」を行っていた。解釈のフェーズでは、「最適な看護への導き」の背景には「潜在的問題を見極める観察力」があり、また「長期的なQOLの検討」があげられた。反応のフェーズでは、「最適な看護への導き」は「その人の人となりを反映」させていた。省察のフェーズでは「その場での最善」の看護の背景には、「患者の尊厳を大切にする倫理的態度」があり「ケアリングによる対象者との相互作用」がみられた。考察リーダー看護師のせん妄における臨床判断の思考プロセスは、状況把握からチーム医療を意識した行動に及ぶ具体的な実践が明らかとなった。リーダー看護師は、患者のその人らしさを踏まえ、全人的に捉える事を意識する倫理的な考えをもち、潜在的問題を見極めながら、せん妄要因への着眼を行い、過去の経験からの包括的推論を即時に行っていた。患者の力を最大限に発揮できるようケアをチームで実施する背景として、クリティカルケア領域のリーダー看護師としての使命感が考えられた。それは状況が起こった背景や看護ユニットの文化に影響されていると考えられた。また、看護ケア後の省察は、実践でうまくいかなかった事を、失敗経験から次の介入を検討する行動がきっかけとなり、臨床知の発達と臨床判断の改善に向けて重要な意味をもつと考えられた。結論クリティカルケア領域のせん妄の看護に対するリーダー看護師の臨床判断は、経験知、全人的な対象の理解、倫理的配慮、潜在的問題を明らかにする事を、分析的・直観的・説話的な思考により、4つのフェーズを辿っていたことも明らかとなった。また、様々な臨床推論パターンを単独もしくは結合して使用していることが明らかになった。