第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演50群 意思決定支援

Sun. Sep 29, 2024 10:30 AM - 11:30 AM 第6会場 (大会議室A4)

座長:飯山 有紀

[口演50-5] 急性期病棟に勤務する看護師のACP実践に伴う困難感の要因分析

宮本 美智子1, 兒島 綾華1, 渡邉 輝大1, 松村 芽依1, 志多 亜希子2, 竹本 洋輔1, 白川 由紀1 (1.四国こどもとおとなの医療センター, 2.南岡山医療センター)

【緒言】急性期病棟のB病棟では,昨年度の人生会議(Advannce Care Planninng:ACP 以後ACPと表記)実施率が4%であった.先行研究では訪問看護師や緩和ケア病棟に勤務する看護師のACP実施の困難感は明確にされているが,急性期病棟の看護師においては明確にされていない.本研究では,急性期病棟の看護師がACPの実践に対し,困難に感じていることを明らかにしケアに繋げていく.【目的】急性期病棟に勤務する看護師のACP実践に伴う困難感の要因を明らかにする.【方法】B病棟に3年以上勤務し,かつACPを実施した経験のある看護師6名を対象にACP実施時の困難感について半構成的面接を行い,データー収集を行った質的記述的研究である.インタビュー内容はACP実践回数やACP実施時の困難感等,5項目とした.A病院の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号R05-07).対象者には,研究の趣旨と目的,また研究の同意は自由意志であることを書面と口頭にて説明し,同意を得た.【結果】対象者のACP実施回数は2回以下3名,4回以上3名であった.困難感の要因として,4個のコアカテゴリー,13個のカテゴリー,36個のサブカテゴリーが抽出された.【考察】B病棟では,生命に直結する疾患を患った患者や平均在院日数の短い患者が多く入院している.普段と異なる環境での生活に混乱する患者も多い.近年複雑な家族構成の中で過ごす患者家族も増加傾向にあり,家族の在り方の変化に伴い様々な価値観を持つ患者が多く入院している.急性期ならではの治療選択や価値観の多様化がACP実施の困難感に繋がっていると考える.また,できれば自分や自分の大切な人の死に向き合いたくないという人間の本心や一般国民のACP認知度の低さもACP実施を難しくさせている要因であると考える.看護師側の要因としては,ACPに対する知識不足やコミュニケーション能力不足,判断能力による困難感が多く挙げられており,ACP聴取の際の言葉選びや深く掘り下げて聞くことへの躊躇いが困難感の要因であると考える.患者の今後の人生について一緒に考え,その人らしく生活してもらうためにACPを実施しようと考えている看護師の思いとは対照的に,患者の反応が恐怖や悲嘆である可能性があることに対して,看護師の中にジレンマが生じてしまっている.このような懸念や葛藤がACP実践の阻害要因として大きく影響していると考えられる.さらに,急性期病棟という場において,病状を治癒するための治療の優先度が最も高く,生命に直結しないACPの実践は後回しにされている現状があり,困難感の要因に繋がっていると考える.【結論】急性期病棟に勤務する看護師のACP実践に伴う困難感の要因として,急性期の治療選択の難しさと患者・家族の価値観の多様化,患者・家族がACPを学習する機会の不足,看護師のACPプロセスの変化を捉えて対応する能力の不足,ACPが組織全体で取り組むこととして認識されていない背景が明らかとなった.