[口演52-5] 看護師のコミュニケーション・スキルの実態
【緒言】看護師にとってコミュニケーションは,情報を伝達するだけでなく,人間関係を構築し,精神的支援を行う手段であり,非常に重要なスキルである。近年は,新型コロナウィルス感染症の影響やSNSの発展により,コミュニケーションの機会や方法が大きく変化してきている。このような状況を受けて,看護の現場でもコミュニケーション・スキルの低下が問題視されている。【目的】A病院における看護師のコミュニケーション・スキルについて明らかにする。【方法】対象:A病院で働く看護師289名 期間:202X年10月1日~11月30日 調査方法: WEBアンケート調査 分析方法:記述統計,属性など各変数によるコミュニケーション・スキル尺度(ENDCORES)の平均値の差の検定,分析にはSPSS(ver.26)を使用。A病院看護部倫理委員会より承認を得た。【結果】回答者175名(60%) 有効回答数174名(99%),属性は,女性(159名90%) 男性(15名 8%) ,経験年数3年目以下(35名20%) 4年目以上(139名80%) ,一般看護師(141名80%) エクスパートナース・管理者(13名20%) ,クリニカルラダーⅠ・Ⅱ(95名55%) Ⅲ以上(68名37%) ,キャリア志向あり群(45名 25%) なし群(129名75%) ,分析結果は,3年目以下は4年目以上と比較して,ENDCORESの下位尺度である《自己統制》(p=0.033)《表現力》(p=0.012)《自己主張》(p=0.016)が有意に低く,《自己主張》はラダーⅡ以下がラダーⅢ以上と比べ(p=0.005),一般看護師がエクスパート/管理者と比べ(p=0.010)有意に低かった。キャリア志向の有無では,あり群が《自己統制》(p=0.000)《表現力》(p=0.009)《解読力》(p=0.008)《自己主張》(p=0.001)《関係調整》(p=0.016)で有意に高い結果となった。【考察】経験年数による比較では,コロナ禍に看護基礎教育を受けた3年目以下は,実習期間の短縮,他者との会話の制限によるコミュニケーションへの自信のなさが原因で有意差が生じた可能性がある。ラダー別,職位別で《自己主張》に有意差がみられたことより,ラダーや専門性の高い者は,リーダーシップをとる機会も多く,自分の意見を主張することを求められ,また主張できる力が備わっていると考える。キャリア志向の有無の比較では,多くのスキルに有意差がみられ,コミュニケーション能力を高めるためには,キャリア教育を充実してく必要があることが示唆された。【結論】A病院看護師の経験年数やラダーレベル,専門性やキャリア志向の違いによるコミュニケーション・スキルの実態が明らかになった。本研究結果を看護師のコミュニケーション能力向上に生かしていきたい。