[口演53-1] 病棟看護師教育によるせん妄予防ケア
意識変化と環境調整の実装
【背景】せん妄は転倒・転落や認知機能低下などの問題につながる。入院環境の調整はせん妄対策に有用である。A病院では多職種連携チームによるせん妄対策ラウンドを行っている。この中で看護師の知識不足やそれに伴う困難感とせん妄対策実施状況とが関連している可能性があると考えられた。【目的】看護師への環境調整を含むせん妄予防ケアに関する教育効果を検証する【実践内容・方法】教育目標として「環境調整を含むせん妄予防ケアの意義や方法について説明できる」を設定した。教育方略は講義形式とした。A病院急性期病棟の看護師23名を対象に、せん妄とその予防のための環境調整について勉強会を実施した。勉強会前後でせん妄についての知識や予防ケアの実践状況に関する無記名式アンケートと環境調整率の測定を行った。せん妄ハイリスク患者の病床について、入院5日以内に①馴染みやすい環境(コップ、写真いずれかの設置)②見当識を維持する環境(カレンダー、時計いずれかの設置、眼鏡、補聴器の使用)のいずれかが実施できた病床の割合を環境調整率として定義した。アンケートの各回答の割合と環境調整率を勉強会前後でχ2 検定で比較した。本研究はB大学病院倫理審査委員会で承認を得て実施した(承認番号2573)。倫理的配慮として研究対象者へ書面と口頭で研究主旨を説明し、研究協力は自由意志であることを伝えた上で勉強会への参加をもって同意が得られたと判断した。【結果】アンケートの回収率は100%ですべて有効回答であった。どういう人がせん妄になるか「分かる」「少し分かる」と回答した参加者が勉強会前は19人(83%)、勉強会後は23人(100%)であった(P=0.12)。勉強会前に比べせん妄予防ケアを意識するようになったと回答した参加者は22人(96%)であった。環境調整の対象病床数は勉強会前86床、勉強会後は50床であった。そのうち①馴染みやすい環境調整ができていたのは、勉強会前で44病床(51%)、勉強会後で36病床(72%)であった(P=0.028)。➁見当識を維持する環境調整ができていたのは、勉強会前で36病床(42%)、勉強会後で34病床(68%)であった(P=0.006)。 【考察】知識不足の状態で認知症ケアを実践する際、看護師は困難感や患者への苛立ち、安全を守るという使命感を感じるために精神的負担を増大させると言われている。今回は勉強会による知識習得で看護師の困難感が軽減され、せん妄予防ケアの行動変容に繋がったと推察される。【実践への示唆】今回の勉強会はせん妄予防ケアの質改善に有効である可能性がある。一方、環境調整率は7割程度であり今後も知識の普及を継続する必要がある。他のせん妄予防ケアについても勉強会を行い、せん妄予防ケアの充実に向けて介入を継続していく。さらに教育対象者の範囲を広げ、多職種とも協働しチームでせん妄予防ケアを行えるよう支援していく。