第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演56群 がんとともに生きる人と家族への支援

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:菅原 真由美

[口演56-5] がん薬物療法による重度口腔粘膜炎の看護ケア

~副作用のケア振り返りから見えたこと~

西本 麻衣, 林 さやか (大阪労災病院)

Ⅰ.背景近年、免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする免疫療法は、従来のがん治療に加えて、新たながん治療の選択肢となっている。A病院では、免疫チェックポイント阻害薬の単独投与に加え、分子標的薬の併用療法を行う患者も増加し、今回重度の口腔粘膜炎を生じた症例を認めた。一時は経口摂取や口腔ケアが困難となり、看護ケアが困難を極めた。そこで、多職種からのアドバイスをもとに、看護ケアの統一を図り介入した結果、改善が見られた。Ⅱ.目的重度口腔粘膜炎の看護ケアを振り返り、適切なケア方法の一助を見出す。Ⅲ.実践内容・方法対象:免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬の併用療法を実施した腎がん術後の女性患者(当時70歳代)内容・方法:がん薬物療法により重度口腔粘膜炎を認めた患者に対する看護ケアをカルテから看護経過を振り返り、評価・検討を行う。倫理的配慮:A病院の倫理審査委員会の承認後、口腔内や皮膚写真の掲載については、個人が特定されないように配慮する。Ⅳ.看護実践入院時より、口腔内の発赤・接触痛・歯肉炎、皮膚や陰部粘膜に紅斑・びらんが見られ、約2週間後にはさらに口腔皮膚粘膜と全身状態が悪化し、集中治療室入室となった。一般病棟退室後、口腔内に多量の出血・血餅を認め、疼痛により経口摂取困難となり、免疫関連有害事象(以下、irAE)の可能性を考慮しステロイドが開始された。看護ケアについては、感染予防・疼痛コントロール・口腔機能の維持・栄養管理の4つの観点から多職種と連携し、急性期・回復期におけるケアの評価と見直しを行った。その結果重症時CTCAE Grade4から退院前にはGrade1~2まで改善した。また、退院後の社会資源の調整と口腔ケアに関するセルフケア指導を患者・家族に行い、自宅退院された。Ⅴ.考察本症例では、急性期~回復期の各時期において患者状態に応じたケアの評価と見直しを行い、適切な時期に適切なケアを提供できた。また、入院時からの統一したケアと多職種連携による継続的支援により口腔粘膜炎の改善につながったと考える。口腔粘膜炎は一度重症化すると、苦痛症状が長期化しQOLが低下するのみならず、全身状態にも影響を与えがん治療の成否にも関わることがある。よって、適切な口腔粘膜炎のマネジメントと予防的な口腔ケアのセルフケア指導が重要である。irAEの発現率は低いながら粘膜炎以外にも多岐にわたる症状が見られ、異常の早期発見・早期治療には、医師を含めた多職種間で早期に情報共有や介入方法を検討し、重症症例の共有を行うことが重要である。Ⅵ.実践への示唆免疫関連有害事象に応じた各領域の専門診療科との連携、入院後早期に医師を含めた多職種間での情報共有やサポートを行う。