第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演56群 がんとともに生きる人と家族への支援

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:菅原 真由美

[口演56-4] 緩和ケア病棟における褥瘡発生減少に向けた取り組み

菅井 祥子, 小林 明日香, 佐藤 直 (聖隷横浜病院)

【背景】 A病院に緩和ケア病棟が開設し3年が過ぎた。がんの終末期患者の疼痛緩和や患者の希望を優先すると、どうしても褥瘡発生要因を完全に取り除くことが難しくなり、開設よりA病院内褥瘡発生率No.1を継続している。全身状態の悪い終末期患者の褥瘡発生は仕方ないこととされているが、「がんによる痛みは緩和されたのに、新たに褥瘡の痛みを与えて良いのか」と考えるようになり今回の研究に取り組んだ。【目的】 新規褥瘡発生件数・部位等を明らかにし、がん終末期患者の褥瘡発生件数の減少を目指すことを目的とした。【実践内容・方法】 202X年4月~202Z年10月までの緩和ケア病棟内の新規褥瘡発生患者のデータ化と分析を行った。病棟スタッフに向けて改めてポジショニングクッションの勉強会を実施した。また、患者の個別性に合わせた褥瘡予防のために、今まで以上に積極的な観察や保湿の強化してらうよう働きかけた。面会に来る患者家族にもマッサージや保湿クリームの塗布等協力してもらうよう率先して呼びかけを行った。倫理的配慮に関してはA病院研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号2023-019)。【結果】 202Y年度は新規褥瘡発生26件中、踵が4件と最多であった。結果をもとに病棟スタッフには現状と踵の褥瘡発生が1番多いことを提示した。 ポジショニングクッションの勉強会を行ったことで、有効的な下肢ポジショニングが実践できるようになった。また、清潔ケアの際に意識的に全身状態を観察するだけでなく、ベッドサイドに立った際にはさり気なく声をかけながら、除圧や保湿をするようになった。面会に来た家族が患者にマッサージや保湿クリームを塗布している姿が見られるようになった。これらを実施継続したことで踵の褥瘡発生件数は2024年10月の時点で0件という結果が出すことができた。【考察】 新しいことを始めるのではなく日常的なケアを見直し、普段から当たり前の“日常の看護ケア”を実践継続してきたことで、1番多かった踵の褥瘡発生が0件になったと考える。 また、現状を可視化することでのスタッフの意識改革を行い、看護ケアに巻き込んだ家族看護、スタッフの負担にならない日常の看護ケアの実践が、良い相乗効果を生み出した。そして、“新たな褥瘡は作らせない”と言うスタッフ1人1人の強い思いを持って、踵の褥瘡発生0件という結果を出すことが出来たと考える。【実践への示唆】 新規褥瘡発生件数は院内で1番多いことに変わりないが、それでも件数は年々減少している。問題点に対し新しいことを始めるのは簡単ではあるが、それはスタッフの負担になり継続浸透していくことは難しい。負担にならずに毎日続けられることを模索し、患者やその家族が少しでも穏やかに過ごせるよう働きかけていきたい。