第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

口演

口演56群 がんとともに生きる人と家族への支援

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:菅原 真由美

[口演56-3] 香りががん患者の思いの表出に及ぼす効果

足浴とアロマ足浴中の会話の比較から

喜多 貴子1, 中山 栄純2 (1.公立羽咋病院, 2.北里大学)

【緒言】アロマセラピーは、様々な医療・看護の分野で取り入れられている。文献検討では、アロマによる鎮痛や緩和などの報告はあるが、その時の会話について検討した文献はほとんど見られなかった。そこで、アロマを用いた足浴を行い、その時に会話した内容をカテゴリー化し、その効果の可能性について分析した。【目的】アロマ足浴が患者にリラックスや非日常感を与えることで、感じる患者の思いは何かを明らかにし、今後の患者サポート支援の一助とする。【方法】1.研究デザイン:介入研究2.研究期間:201X年6月~202X年12月3.研究対象:stageⅣと診断されたがん患者30名(平均年齢73.8±11.7歳、男性12名、女性18名)4.方法:すべての対象者に通常の足浴(以下足浴群)とアロマを滴下した足浴(以下アロマ足浴群)を別日に行った。各条件は、クロスオーバーで実施順番による差異をなくした。5.分析方法:足浴中に対象より自然発生的にされた会話を研究者が終了後に想起し、その内容をカテゴリー化した。対象からの会話は、思いを受け止めるにとどめた。6.倫理的配慮:対象者には、参加は自由意志であり、拒否があっても今後のケアに影響がないこと、個人が特定されないこと、学術集会で発表することを説明し、同意書をもって同意を得た。尚、本研究に際し、A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号A-172)【結果】足浴群では、1カテゴリ―≪気持ち良さ≫、2サブカテゴリー<リラックス><癒し>、5コードの中には「だるいのが楽になった」「気分が良い」などが抽出された。一方、アロマ足浴群では、5カテゴリー≪今まで生きてきて改めて感じたみんなへの感謝≫≪死への思いや辛さ、感じている不安≫≪退院して実現したい事≫≪生きている間に果たさないといけない責任≫≪治療への自分の意思決定≫が抽出された。19サブカテゴリーの中に<人生への感謝><周りへの感謝><死への受け入れ><今後への不安><結婚式がしたい><家業の伝承><化学療法は、もうしたくない>などが抽出された。27コードの中には「思い出すことばかりだがよい人生やった」「一人一人礼を言わないとね」「死ぬのは怖くないよ」「色々な病院を転々としてきた。どうなるのか」「夫には話をしないといけないけれど結婚式がしたい」「長男に家業を譲らないといけない」「治療をしたくないと先生に言う。早く家に帰りたい」などが抽出された。【考察】足浴に追加して、非日常的な香りを加えることで、足浴の気持ち良さに相まって患者が日頃表出しない感情の表出につながったと考える。日々のケアの中に何気ない非日常的要因とゆっくりとした環境を調整することで、患者の思いの表出につながる可能性があることが示唆された。【結論】足浴にアロマを用いることは、患者の思いの表出につながる可能性がある。