第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演58群 褥瘡・スキンテアへの対応

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第9会場 (中会議室D1+D2)

座長:杉本 環

[口演58-6] 地域における皮膚・排泄ケア特定認定看護師としての役割検討

持ち込み褥瘡患者を分析して

日田 さやか (くまもと県北病院)

【緒言】A病院に所属する皮膚・排泄ケア認定看護師が、創傷管理関連の特定行為研修を修了した。今後は地域支援病院に勤務する看護師として、院内にとどまらず地域に赴き,専門領域の看護を実践する必要がある。【目的】地域医療支援病院であるA病院での持ち込み褥瘡の現状を明らかにし、皮膚・排泄ケア特定認定看護師として地域で果たすべき役割と今後の活動を検討するための示唆を得る。【方法】A病院開院後2年3か月間に褥瘡を保有し入院した患者、のべ348名を対象として、褥瘡の重症度、褥瘡発生した療養環境、社会資源の導入などの情報をカルテから収集し分析を行った。また入院時の状況や家族・医療者の発言記録から、持ち込み褥瘡発生要因とその影響因子を抽出するため、関連するものを整理・統合する手法であるKJ法を用いた質的分類を行った。 研究にあたっては、A病院倫理委員会の承認を得た(承認番号 A-202321)。【結果】 褥瘡を保有し複数回入院する対象者の95%が、何らかの医療サービスを導入していた。また褥瘡評価ツールDESIGN-R評価(以下DESIGN-R評価とする)において、D3以上の深い褥瘡保有者は全体の39.9%にあたり、その半数は病院・施設に入所中であった。KJ法で分類された褥瘡発生要因および影響因子は、低栄養などの身体的要因、認知症などの精神的要因、相談窓口がないなどの社会的要因、タイムリーな介入困難・専門科への通院困難・入所施設スタッフの教育の差などが含まれるその他の要因に分類された。【考察】医療サービスを導入し退院したが、次回入院時には再発する事例が大半を占めた。再発予防策として退院カンファレンスの場に専門的な知識を持つ看護師が介入し、予防方法の具体的な指導を行う。また退院後の継続的な褥瘡ケアへの介入や相談窓口として、看護専門外来の開設が考えられた。DESIGN-R評価D3以上の深い褥瘡保有者のうち、約半数が施設・病院に入所していた。多職種で構成される施設スタッフは褥瘡ケアに対する知識・技術に差があり、そこを考慮した実践的な褥瘡の研修会を開催する。。またその場を活用し、地域の医療スタッフと意見交換や関係性の構築を図ることで、私たちに求められるものが明確化し、地域に密着した活動につながると考えられる。また専門医への通院が困難、タイムリーな介入が困難な現状もみられた。特定行為を修了した看護師がタイムリーに介入できるようなシステム構築を行い、積極的に院外活動を行うことが重要となる。周知活動と並行して、安全な実践のために自らの知識・技術の維持向上に努める必要がある。【結論】今後、地域医療支援病院に勤務する皮膚・排泄ケア特定認定看護師として、相談窓口としての看護外来の開設や地域の医療スタッフとの関係性の構築、地域でのタイムリーな介入に向けたシステム作りなどに取り組む必要があることが示唆された。