第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演58群 褥瘡・スキンテアへの対応

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第9会場 (中会議室D1+D2)

座長:杉本 環

[口演58-5] 重度褥瘡のケアを実施する家族への支援

外来と訪問看護の支援で治癒した一事例

小山 陽子1, 羽田 弘子1, 荒井 敦子1, 田上 亜希子1, 牛田 貴子2 (1.千曲中央病院, 2.湘南医療大学)

【背景】外来看護師、訪問看護師が家族に支援し重度褥瘡が治癒した事例(80歳代、男性、要介護5)を経験した。形成外科外来の初診時、仙骨部は腫脹し、皮下には20㎝程の壊死組織と膿の貯留があった。1週間後ポケット拡大があり皮膚切開した。妻が日中の介護を、長男が外来通院を担っていた。【目的】外来初診から治癒までの3ヵ月間の褥瘡ケアに関する家族への支援と結果を経時的に整理し、効果的な家族ケアを明確にして実践への示唆を得る。【実践内容・方法】発表にあたりA病院倫理委員会で承認を得た(承認番号A-23千9病倫第2号)。本人と家族に匿名化することや情報管理、学術集会で発表することを説明し同意を得た。診療・看護記録から褥瘡ケアに関する家族への支援や反応、褥瘡の経過を抽出してデータとした。初診時に長男は「家で処置するのは無理です」と話し、創処置は週2回外来受診、週2回デイサービスで実施した。ケアマネージャーに体圧分散寝具利用を依頼した。外来カンファレンスで①長男の不安や困難を傾聴し理解を示して励ますこと、②無理強いせずに創処置や体位変換を見せながら必要性と方法を丁寧に説明することを共有した。長男が処置を実施できるようになって以降は、できていることを褒め労った。初診から2週間後、外来通院を週1回に減らして通院の負担を軽減する目的で、訪問看護を導入するにあたり開催したサービス担当者会議では、医師から褥瘡の状態、外来看護師から家族の生活状況や介護状態について情報提供した。さらに外来と訪問の役割分担を確認し、外来は医師の治療と長男への支援を継続、訪問は全身状態管理と妻への不安軽減に向けた相談指導とした。訪問看護からの情報は外来で共有し、必要時は内科受診に円滑につなげた。【結果】受診2回目以後からは長男が自宅で創処置や体位変換ができるようになり、慣れた段階では自ら質問し熱心に指導を受けた。訪問看護導入後は排便状況が改善し食事摂取量が増加した。褥瘡は、皮膚切開以降悪化はみられず、4週後には壊死組織はなく肉芽形成良好となり、9週後には急速に縮小、12週後に閉鎖し通院終了となった。【考察】外来で長男の不安や困難に理解を示し、根気よく指導と励ましを継続したことで信頼関係が築かれた。また処置を評価し、褥瘡の改善状況を一緒に喜び、労ったことが長男の自信につながった。訪問看護導入後は通院の負担軽減だけでなく、妻の不安軽減になり家族による適切な褥瘡ケアの継続につながった。さらに全身状態の管理もできたことで褥瘡の治癒につながった。この長男と妻の経験はその後の褥瘡予防ケアの継続にもつながると考える。【実践への示唆】外来での情報共有と意識的な関り、訪問看護との役割分担と情報・ケアの共有により多角的に家族を支えた一事例であり、地域での看護活動強化に示唆を与える。