[口演6-2] クリニカルパス改定による看護師の業務改善
~予防的鎮痛剤導入によって得られた効果~
【背景】A病院では、クリニカルパス(以下パス)を用いることで、医療の標準化に取り組んできた。また、パスは実施したプロセス及びその結果を数値化し、分析・評価・改定のPDCAサイクルを回すことのできる有用なツールである。今回、「疼痛」に着目してA病院のパス分析を行った。A病院では疼痛管理目標をNRS3以下とし、NRS4以上をバリアンスとして疼痛コントロール率等を可視化している。その結果、外科系のパスでバリアンス出現が術直後にピークがあることが明らかになったため、疼痛バリアンスの減少を目指して、鎮痛剤の予防投与をパスに組み込んだ。そこで、パス改定後の効果検証を行い、患者の苦痛軽減だけでなく、看護師の業務軽減の効果が得られたため、その結果を報告する。 【目的】疼痛は患者にとって苦痛の経験である。疼痛を適切にコントロールできることは、患者満足の向上に繋がるだけでなく、看護師へのメリットも大きいと考えた。患者が疼痛を訴えた場合の看護師の対応としては、患者状態を確認・アセスメントし、医師への報告を行いながら、必要に応じて薬剤等を準備し投与するプロセスとなる。さらに薬剤投与後にも再評価を行い、これらの一連の過程を記録する必要がある。看護師の業務は、重症度や介護度などの患者状態に加え、緊急入院・手術等の環境面にも影響を受け、予定通りに看護実践ができないことも多い。そのため、パス改定による適切な疼痛管理で、追加鎮痛剤投与に係る看護師の業務軽減ができるのではないかという仮説を立て、バリアンス発生件数や薬剤使用件数等でパス改定の効果を検証した。 【実践内容・方法】匿名加工情報のみを用いた報告で、A病院の倫理審査会で承認を得ている。対象パスは、ロボット支援下前立腺全摘術パスで、パス改訂前後の90症例の2群間で疼痛コントロール率を比較した。また、追加鎮痛剤の使用件数とそれに係る業務量を時間で算出し、業務量の変化を評価した。 【結果】 疼痛コントロール率はパス改定前の51%から、改定後は68%と上昇を認め、予防的鎮痛剤は疼痛バリアンス減少に効果があったと示唆される。また、追加鎮痛剤の使用件数は改定後に81件減少し、業務量は約70%減少した。さらに、患者アンケートにて「痛みが十分にコントロールできたか」の問いに対し、「常にそうだった」と回答した患者は、改定前の41%から58%まで上昇した。 【考察】適切な疼痛管理は、患者満足度の向上と患者の苦痛軽減に繋がると考える。また、追加鎮痛剤投与にかかる一連の業務を削減できることで、看護師の業務軽減・働き方の改善にも寄与することが期待できる。 【実践への示唆】今回の改善をモデルケースとし、A病院全体の疼痛管理の標準化を検討していく。また、今後疼痛以外にも着目し、看護師の業務量を可視化する仕組みと改善案を提案していきたい。