[ポスター11-3] 自宅退院した患者家族の困りごとの分析
電話調査から見えてきた退院後の生活の現状
【背景】A病棟は回復期リハビリテーション病棟であり、患者が心身ともに回復した状態で在宅復帰できるよう、多職種と協働し退院支援を行う病棟である。患者・家族を含め、多職種でチームアプローチを実践し退院指導を行っている。しかし、A病棟を退院した患者は1~2年以内に脱水や脳卒中再発や転倒骨折で再入院する事も少なくない。【目的】患者・家族の退院後の生活における困りごとを振り返る。【実践内容・方法】202X年4月1日から202X年2月28日の期間で自宅退院した患者を対象に、指導を受けて良かったこと、介護者または本人の負担度や疲労度、困ったことなどを電話調査用の質問用紙を使用し調査した。質問用紙に記述された自由回答データを一つの意味内容が含まれるように「移動」「介護力」「疾患理解・管理」「服薬」「その他」の5つに分類し、その分類ごとに困りごとの内容をまとめた。また、研究対象者に個人情報・プライバシーの保護、研究の公表、研究に使用したデータは研究以外には使用しないことを説明し、同意を得た。本研究は当院看護部の倫理審査会を受審した。【結果】 自宅退院患者のうち電話調査を行った対象者85名中24名が困りごととしての回答があった。移動に関しては29.1%で、転倒が多く「自宅では布団を使用し夜中に1回転倒した」「入院中はほとんど車椅子で移動していたが自宅では杖歩行だった」などであった。介護力に関しては20.8%で、失禁や介護量の多さ、せん妄症状出現による介護疲れであった。疾患理解・管理に関しては16%で、退院後の食事や排泄に関する事などであった。服薬に関しては12.5%で、内服忘れや飲み間違いであった。その他14.3%であった。【考察】移動に関する困りごとの原因として、看護師が入院前の患者を十分に理解した退院後の在宅環境の変化に適応するための十分な退院指導が不足していたことが考えられた。介護力に関する困りごとの原因としては、介護者が入院中に変化した身体機能や認知機能(麻痺や高次脳機能障害)の変化のイメージ不足が考えられた。疾患理解・管理では家族の疾患への理解不足が原因であり、退院後を予測した具体的な指導が必要であった。服薬では認知機能低下による内服忘れなど、看護師は退院後の認知機能低下を想定し早期に家族も含めた指導をする必要があった。【実践への示唆】自宅退院後、患者家族がQOLを維持しながら、困りごとなく生活するためには、在宅での患者の生活をイメージした指導が必要である。そのためには、患者の入院前の生活を情報収集することが重要である。また、入院前の生活と現実とのギャップによる困りごとを最小限にするために多職種との連携を深め、入院当初から患者家族を中心とした退院指導に取り組んでいくことが重要である。