第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター19群 意思決定支援①

Fri. Sep 27, 2024 3:45 PM - 4:45 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:加藤 智子

[ポスター19-2] A病院における看護師による意思決定支援の現状と課題

野中 幸, 尾上 千枝, 坂口 清美 (済生会熊本病院)

【背景】近年医療・介護の場において、看護師は患者・家族の意思決定を支える役割が期待されている。2016年日本看護協会「看護師のクリニカルラダー」では、看護実践能力の一つとして「意思決定を支える力」が盛り込まれた。A病院においても全看護師が「意思決定を支える力」を発揮できるよう、看護師教育や記録テンプレートの整備に取り組んできたが、看護師各々の実践が把握できないという現状があった。【目的】看護師用「意思決定支援記録」テンプレートを用いた記録内容を調査し、A病院看護師の意思決定支援の実際と課題を明らかにする。【実践内容・方法】202X年1月~12月の1年間に、A病院全部署で記録された記録テンプレート2741件の各項目を後方視的に調査した。記録テンプレートは以下内容を含む。意思決定支援の場面(説明と同意〈以下I.C〉の場or看護面談の場)/意思決定支援の目的/実施時刻と場所/支援の対象者と同席者/支援に要した時間/対象の意思決定能力の評価/看護実践の内容(患者ニーズの共有/説明の場での公平性の見守り/説明中や後の情緒的サポート/情報提供.理解のサポート/社会的支援の拡充や専門家への橋渡し)/医療への価値観/決定した内容。なお本発表にあたって、A病院看護部倫理委員会の承認を得、個人が特定されないよう配慮した。【結果】意思決定支援の場面は「I.Cの場」:「看護面談の場」=9.7:1の割合で「I.Cの場」が多かった。「意思決定能力評価」の記録率58.2%,「医療への価値観」の記録率56.4%だった。看護実践の内訳は「患者ニーズの共有」41.1%,「公平性の見守り」64.5%,I.C中の「情緒的サポート」59%,I.C後の「情緒的サポート」61.8%,「情報提供.理解のサポート」45.4%だった。意思決定支援にかかった時間の中央値は40分だった。部署別では、記録数の増加が著しい部署とそうでない部署で差があり、部署別の平均記録数は167件/年(SD=199)だった。【考察】看護師による意思決定支援の実践が記録データとして数値化され、看護師による実践内容と傾向が明らかになった。特に課題と考えられたのは「看護面談の場」より「I.Cの場」の記録が圧倒的に多かったことであり、要因として意思決定支援を提供できる場を「I.Cの場」と捉える看護師が多かった可能性が考えられた。また、「意思決定能力の評価」および「医療への価値観」の記録が半数近く未記入であったことは、今後の支援を検討する上で重要な情報であるという認識が不足していたことや、コミュニケーションの取り方、各項目の評価方法が分からないなど、看護師の知識・スキル不足も要因として考えられた。【実践への示唆】記録テンプレートを活用し、患者・家族の意向に沿った意思決定を促すために、評価すべき項目と評価方法、コミュニケーションスキルといった看護師教育の課題が示唆された。