[ポスター30-5] 高齢患者のインスリン自己注射手技の実態
介入5年後における追跡調査
【緒言】高齢化によりインスリン自己注射の継続が困難となる患者がしばしば見られる。著者らは、看護師の療養指導により高齢者においても有意に自己注射手技が向上すること、改善効果が高かった項目はずらし打ちの必要性についての知識であったことを明らかにした(石田,2020)。本研究はその介入5年後の追跡調査である。【目的】高齢糖尿病患者におけるインスリン自己注射手技チェックの介入から5年後、患者の自己注射手技がどのように変化したか明らかにする。【方法】調査期間:202X年11月~202Y年2月。対象者:A病院外来通院中の糖尿病患者で、201X年(以下、介入前)に看護師による自己注射手技のチェックと、不十分だった手技については指導を受け、201Y年(以下、介入後)に再度自己注射手技のチェックを受けた者。患者は定期的に看護師の療養指導を受けている。前回同様に、対面で自己注射チェックリスト(ノボ・ノルディスクファーマー)の24項目について自己注射デモ材料を用いたチェックと聞き取り調査を実施。結果は単純集計した。本研究はA病院倫理委員会にて承認(承認番号22011)を得て、対象者に研究趣旨、匿名性保持、参加・辞退の自由とそれに伴う不利益は一切生じないこと等を書面と口頭にて説明し、同意を得た。【結果】介入後自己注射手技のチェックを受けた53名のうち、5年後の対象者は35名66%、平均年齢76.4±5.7歳であった。自己注射チェックリストにおいて、24項目のうち12項目が対象者9割以上の達成度であった。そのうち、「指示単位数を知っているか」「注射針を正しく取り付けたか」「注入単位数を正しく設定したか」「注入ボタンは最後まで押したか」を含む9項目は、介入前から5年後の調査にかけて9割以上の達成度を維持していた。介入後の改善効果が高かった「ずらし打ちの必要性を知っているか」を含む3項目では、達成度が上昇後、5年後においても9割以上の達成度を維持していた。【考察】対象者は、介入から5年後も約7割の者がインスリン自己注射による療養生活を継続していた。自己注射手技においては、チェックリスト24項目中の半数が9割以上の達成度であったことから、インスリンを確実に注入するための手技が身についていることが示された。加えて、介入後に達成度が上昇した項目が5年後も維持され9割以上の達成度であったことは、高齢患者は看護師の定期的な指導により、日々のインスリン注射をより効果的にするための新たな知識・手技の習得とそれを保持することが可能であると示唆された。【結論】外来通院中のインスリン自己注射を継続する高齢患者は、歳を重ねてもインスリン注射を確実に行うための手技を保持していた。加えて、看護師の定期的な指導により、新たな知識・手技の習得とその保持が可能であると示唆された。この結果は、一施設での調査であり一般化には限界がある。