第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター33群 褥瘡ケア

Sat. Sep 28, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:田中 久美

[ポスター33-5] ECMO装着中の腹臥位看護実践の経験

看護介入の振り返りと今後の課題

松永 里恵 (佐世保市総合医療センター)

【背景】 先行研究で、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)患者の低酸素血症の改善に腹臥位が有効であることが示されている。その一方で腹臥位時の褥瘡発生が挙げられている。今回、COVID-19感染後に低酸素血症を発症したECMO装着患者に腹臥位を実践した。【目的】 腹臥位保持時の褥瘡予防ケアの課題を明らかにする。【実践内容・方法】 事例は、70歳代A氏、2型糖尿病、高血圧症、肺結核の既往歴があり、急性リンパ性白血病の診断にて化学療法中にCOVID-19に罹患する。発症25日目にECMO管理目的にてB病棟入室となった。対象者には個人が特定されないよう匿名化することと情報の管理について、また、学術集会で症例報告として発表することを書面で説明し、同意書をもって同意を得た。 A氏の腹臥位実践前に、方法や役割についてB病棟スタッフでカンファレンスを行い、テープテア・医療関連機器圧迫創傷発生リスクについて具体的な検討を行った。入室17~18日目に腹臥位を1日目5時間40分、2日目4時間50分実践した。実践1日目に送脱血管により圧迫される両大腿部、胃管により圧迫される頬部に創傷被覆・保護材を貼付した。また、実践2日目に気管チューブの固定をカテーテル固定用パッチに変更した。【結果】 A氏は、Alb値1.9g/dlであり、低アルブミン血症による血管透過性亢進や、輸液負荷等により全身浮腫に起因して皮膚脆弱性が高まっていた。栄養管理においては、アルブミン製剤や高カロリー輸液が投与され、腸管免疫向上の目的で栄養機能食品を使用していた。日々の循環動態やデータに合わせた輸液管理が行われていたため、栄養サポートチーム(以下NST)未介入であった。皮膚・排泄ケア認定看護師(以下WOCN)の介入はあったが、腹臥位時の皮膚ケアに関しては相談せず、病棟看護師にてカンファレンスを行い、褥瘡予防に努めた。 両日とも実践中は1時間毎に低反発クッションの位置変更や除圧、良肢位の保持を行い、褥瘡発生なく腹臥位を実践した。【考察】 NST介入後の新規褥瘡発生率は0.5~0.6%、褥瘡の改善率は40~50%と報告され、NSTによる栄養管理が褥瘡予防や改善に一定の効果があることが示されている。褥瘡発生の多くは栄養障害に関連しており、A氏にとってNST未介入による栄養管理は褥瘡発生率を高める可能性があった。 今回A氏に実践した皮膚保護や除圧は、有効なケアとなり褥瘡予防に繋がったのではないかと考える。しかし、WOCNへ相談し、より効果的な方法も実践できたのではないかと考える。【実践への示唆】 本研究を通し、ECMO装着患者の腹臥位保持時の褥瘡予防ケアにおいて、NST介入による栄養管理、WOCN介入による専門的な褥瘡予防ケアも含めた多職種協働のケアの実践がより良いアウトカムをもたらすことが示唆された。