[ポスター4-1] 新人看護師の社会人基礎力の実態
急性期機能と回復期機能の比較
【緒言】社会人基礎力は,職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力である.先行研究において,社会人基礎力を高める要因として職場環境や職業キャリア成熟が重要であり,職業キャリア成熟に関係する要因として,配属部署との関連が報告されている.このことから,医療機能が異なる急性期機能と回復期機能では,勤務する新人看護師の社会人基礎力に違いがあるのではないかと考えた.医療機能別の新人看護師の社会人基礎力を比較した報告はみられない.それぞれの新人看護師の社会人基礎力の傾向を明らかにすることで,社会人基礎力の強化につながる継続教育の示唆が得られると考えた.【目的】急性期機能と回復期機能の比較を通して,それぞれの新人看護師の社会人基礎力の実態を明らかにすることを目的とした.【方法】対象者は,A地区内の急性期機能の病棟に勤務する入職3年目未満の看護師252名,回復期機能の病棟に勤務する入職3年目未満の看護師137名とした.調査方法は,無記名自記式アンケート調査を実施した.アンケート内容は,基本属性5項目(性別,年齢,所属する医療機能,経験年数,最終学歴),経済産業省より公表された社会人基礎力育成・評価のためのプログレスシートを基に独自に作成した社会人基礎力の構成的質問票全36項目を用いた.質問票作成に際しては,経済産業省の経済産業政策局産業人材政策室に問い合わせ,使用許諾を得た.分析方法は,対象者の基本属性は記述統計,社会人基礎力の要因抽出は主因子法によるバリマックス回転,内的妥当性はCronbachのα係数により分析を行った.医療機能別の新人看護師の社会人基礎力の比較をMann-Whitney検定を用いて分析した(P≦0.05).倫理的配慮では,本研究はA病院の倫理委員会の承認を受けて実施した.調査への協力は自由意志に基づき,回答しなくても不利益を受けることはないこと,結果は統計的に処理し個人が特定されることはないこと,アンケートおよびデータの管理は厳重に行うことを説明書に明記し,回答をもって同意とみなした.【結果】配布数は389部うち,回収数は342部,有効回答数329部であった.医療機能別の対象者は,急性期219名,回復期110名であった.社会人基礎力の因子分析を行い,4因子が抽出された.第1因子は『他者理解能力』,第2因子は『主体的思考能力』,第3因子は『課題実行能力』,第4因子は『ストレス調整能力』と命名した.医療機能別の新人看護師の比較については,『主体的思考能力』において急性期機能と回復期機能で有意差がみられた(p<0.01).【考察・結論】それぞれの医療機能における看護師の役割や特徴が社会人基礎力に影響を与えている可能性があると考える.そのため,医療機能の特徴に応じた新人看護師の社会人基礎力を把握し,社会人基礎力の育成を意識した継続教育を行っていくことが重要であることが示唆された.