第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター48群 精神看護②

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:屋嘉比 浩子

[ポスター48-1] 精神科病棟における感染症対策と看護

COVID-19受け入れとクラスターを振り返って

田口 恭代, 西本 貴皓, 境 菜々子 (奈良県立医科大学附属病院)

【背景】A病院精神科A病棟で、他の精神科病床では治療困難な新型コロナウイルス感染症(Coronavirus disease2019:COVID-19)感染者の受け入れが始まった。患者の多くは、自身が感染者であることや治療の必要性を理解できず、精神症状に合わせた看護は多くの人員や工夫を必要とした。 その後 精神疾患を有するCOVID-19看護が確立された頃、精神科B病棟においてクラスターが発生した。感染者と非感染者が混在する中での看護には、それまでとは異なる困難さがあった。感染症に脆弱な環境である精神科病棟での感染症対策と看護を考えることは、感染拡大を防ぎ、患者の心身の安全を確保する上で急務と言える。【目的】精神科病棟におけるCOVID-19看護ケアの確立から、その後発生したクラスターでのスタッフの動き、状況を振り返ることで、精神科病棟における感染症対策と看護を検討する。【実践内容・方法】実施した治療、ケアや感染管理の情報を電子カルテで後ろ向き調査を行い、記述した。患者の属性や治療、ケアに関する情報の収集は匿名化し、個人を特定できる情報の記述は行わなかった。【結果】COVID-19陽性者受け入れ期間は、コミュニケーション障害や記憶障害、不穏や興奮といった精神症状を有する患者が多く、疾患や治療への理解が難しかった。患者の安全な移送やケアに多くの人員を必要とし、精神状態をアセスメントして ケアに不可欠な物品の配置を考える必要があった。閉鎖環境へのストレス緩和のためのレクリエーション支援の工夫が必要となった。クラスター発生時は、感染状況に合わせゾーニングの変更や臨時の物品置き場の確保、患者の生活環境における質の向上のため、日々感染制御チームと検討した。スタッフもCOVID-19に感染し通常よりも少ない人数での対応となり、十分なケアを遂行できないジレンマも生じた。クラスターは15日間で収束し、全国の精神科病棟においては早い収束であったと評価を受けた。【考察】 患者の移送や日々のケアの中で、安全のために十分な人員を配置したことにより、スタッフおよび病棟内の他患者への感染拡大を防いだ。精神状態をアセスメントした上で物品を配置したことで、ケアの質と患者の安全を両立した。レクリエーション支援の充実を通して患者の安心や安楽を満たすことにより、感染症対策を徹底しながらも精神看護を実践することができた。COVID-19対応経験があるスタッフによる指導や、日々変わる状況や収集した患者の思いを管理職や感染制御チームとの共有、専門的な意見を取り入れた対応のタイムリーな実践により、クラスターを早期に収束できた。【実践への示唆】管理職、感染制御チームと協同し、感染対策と精神看護の両立を検討する。精神科病棟の感染症への脆弱性を理解し、感染症を持ち込まないための対策を強化する。感染症が発生した場合の精神科における早期の適切な行動の指標が必要となる。