[ポスター5-1] ICU予定外入室の患者の特徴とRapid response systemの現状
単施設後ろ向き観察研究
【緒言】大学病院であるA病院は2020年より Rapid response system (以下、RRS)が設置された。RRS導入効果の評価指標として集中治療部(以下、ICU)予定外入室がある。RRSが効果的に活用されることで重症化をより早期に発見し対処できると推定でき、RRS要請の有無により、患者特徴に違いがある可能性を考えた。また、臨床的悪化を来しICUへ入室した患者の特徴を把握することで、RRSの啓蒙や状態変化予測へ活用できると考えた。【目的】ICU予定外入室をした患者特徴とRRSの導入効果を明らかにし今後のRRSの在り方を検討する。【方法】研究デザインを単施設後ろ向き観察研究とし、202X年4月1日から翌年3月31日にA病院ICUに予定外入室した成人患者を調査した。検査中や術中に発生した予期せぬ事象で病棟を介さなかった事例や自傷行為によるICU入室は除外した。電子カルテから後方視的に、患者背景、病棟入室から臨床的悪化までの日数、ICU予定外入室前の病棟でのバイタルサイン等を収集した。対象者を、RRS経由群と非経由群の2群間に分け、説明変数がカテゴリー変数の場合はχ2検定、連続変数の場合はMann-WhitneyのU検定を用いて統計学的に検討を行った。有意水準は5%とした。A大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】研究対象患者は132名であった。病棟入室から臨床的悪化まで72時間以内の対象患者は59名であり、その病棟入室経路の内訳は緊急入院後(19名)、手術帰室後(16名)、ICU等退室後(16名)、緊急手術後緊急入院したもの(1名)で88.1%を占めた。呼吸数記録実施率は約8割であり、臨床的悪化8時間前の呼吸数記録回数は2(1-3)回であった。ICU滞在日数は4(2-8)日、28日以内の死亡は22名(16.7%)であった。対象患者をRRS経由群(n=14)、非経由群(n=118)に分け統計学的に検討したが、2群間で有意差のある項目は検出されなかった。【考察】病棟入室から臨床的悪化まで72時間以内の患者が5割弱を占め、その多くが緊急入院、手術帰室、ICU等からの転室など何かしらのイベントを有していたことは、ICU予定外入室患者の特徴と言える。また、病棟における臨床的悪化8時間前の呼吸数記録回数が複数回だったことから、臨床的悪化を来した患者に対して看護師が何らかの懸念を持って対応していると推察できるが、RRSの有用性を示すことはできなかった。RRS起動に対して何らかの障壁が存在する可能性を考慮すべきと考えた。今後の活動の示唆として、上述した患者特徴を Critical care outreach team (CCOT) の対象に含むことや臨床的悪化リスクを抱える患者として啓蒙すること、RRS要請側の視点に立った活用しやすい仕組みづくりの必要性があげられる。【結論】A病院のICU予定外入室患者の特徴は明らかになったが、RRSの有用性は証明できなかった。今後のRRS活用推進において、要請側の視点に立った仕組みづくりの必要性が示唆された。