[ポスター5-2] 人工呼吸器離脱プロトコル導入に至るプロセス
他職種協働について
【背景】人工呼吸療法は呼吸不全をはじめ大手術後、意識障害や循環不全等などでも必要となる。A病院における令和4年度の人工呼吸器装着患者は152名であり、人工呼吸療法は重要不可欠なものとなっている。しかし、その一方で合併症も懸念され、原疾患の治療とともに人工呼吸器からの早期離脱を目指すことが重要である。A病院においても人工呼吸器からの早期離脱や安全管理目的に呼吸ケアチーム(RST)の活動を行なっているが、人工呼吸器離脱プロトコル(以下プロトコル)はなく、各診療科の医師に委ねられている現状であった。また、抜管後の上気道狭窄の所見をはじめ、観察項目を明記したものも存在しなかった。【目的】多職種が協働し、安全な人工呼吸器離脱を目的として、プロトコルを作成し導入を試みた。【実践内容・方法】倫理的配慮については、プロトコル使用の対象者に匿名性の確保と症例の発表について事前に説明し、文書で同意を得ている。また、実践報告を行う者は、eAPRINの受講を修了している。今回、人工呼吸器離脱に関する3学会(日本集中治療医学会、日本クリティカルケア看護学会、日本呼吸療法医学会)合同プロトコルを参考にプロトコル案を作成した。A病院RSTでプロトコルを検討後、医師、看護師、臨床工学技士等で構成される人工呼吸安全対策部会で導入の承諾を得た。また、プロトコルの運用開始については医局会で周知した。その後、人工呼吸器装着患者が多いICUからの導入を目指し、ICUスタッフに人工呼吸器の早期離脱の意義、プロトコルの内容、看護師の行う観察のポイントや多職種協働について説明し、導入準備を進めた。また、安全な人工呼吸器離脱を図る為、多職種がプロトコルを理解して共通認識を持って介入できるように電子カルテへの入力を整備し、手順をラミネート加工していつでも確認ができるように配置した。【結果】202X年5月からプロトコルの使用を開始した。6ヶ月間で介入患者数12名、介入総数29件(自発覚醒トライアル12件、自発呼吸トライアル17件)である。11名は抜管後に上気道狭窄等の問題はなく、人工呼吸器を離脱できた。他1名は気道の問題で人工呼吸器離脱は延期となり、気管切開に至ったが、最終的には人工呼吸器を離脱できている。【考察】人工呼吸器からの離脱をプロトコル化し実施していくことで、人工呼吸期間や離脱期間の短縮につながる有用性が確認されている。A病院においてプロトコルを導入したことで、多職種が抜管に向けて情報共有を行い、共通認識を持って協働し、安全性を担保できている。また、多職種協働や段階を踏んだアナウンス等によってプロトコル作成から導入へ至ったと考える。【実践への示唆】人工呼吸器装着患者を担当する多職種が安全性を担保しながら、早期に人工呼吸器離脱に向かえるように、集中治療領域のみならず、人工呼吸器装着患者が多い部署からプロトコルの導入を拡大していきたい。