第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター50群 出産・育児への支援

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:濱嵜 真由美

[ポスター50-6] 養育への意思が変わる妊婦への援助

ー援助者が感じた違和感を振り返ってー

濱田 恵美子, 齋藤 りさ, 涌嶋 嘉子 (千船病院)

【背景】妊婦が出産後に自らの手で養育できない場合、児の養育に関する選択肢は、特別養子縁組、里親制度利用、母子寮での生活、生活基盤を整えてからの育児など多岐にわたる。【目的】若年の未婚妊婦が妊娠中期に中絶が出来ないと知り、定期的な受診がない中で養育に関しての意思が二転三転し、援助の方向性について迷いが生じた事例を通して医療ソーシャルワーカー(以下MSW)との支援を振り返り、そこからの学び、課題を明らかにする。【実践内容・方法】対象者には個人が特定されないよう匿名化することと情報の管理について、また、学術集会で症例報告として発表することを書面で説明し、同意書をもって同意を得た。A氏10代未婚女性、妊娠27週に中絶希望にて前医を受診し、B病院へ紹介受診となった。里親制度利用希望であると話しMSWと共に面談を行い、本人の同意を得て地域への連絡、養育意思の確認、育児支援者の確認を行い、定期的に地域保健師との情報共有を行った。2~4回目の受診、妊娠33~37週で妊婦は養育へ意向が変更した。両親には伝えず遠い親戚と養育すると話した。A氏は若年であり、またシングル、親には内緒、定期的な受診なし、夜間の仕事、出産後早期に仕事復帰などから、児をこのまま連れて帰らせて、児の健康が脅かされないのかと不安が募った。そのため、育児のサポート体制の細かな聞き取り、児の養育環境確認を地域へ自宅訪問依頼した。また、初診時が中絶希望であり、毎回の妊婦健診で胎児への思い・愛着についての確認を行った。妊娠38週の来院時には、養育は現実的でないと一時乳児院の希望あり、特別養子縁組や里親制度、乳児院の利用など可能な支援の説明を行った。妊娠40週健診時に、実家に妊娠している事が知れたことがきっかけとなり、実母と共に来院した。実父母のサポート体制確認を行い、地域へ出産後の支援について情報提供を行った。【結果】A氏の住居、育児環境やサポート全てにおいて確認が取れずに週数が過ぎていき更に、養育への意思が二転三転していた。しかし、実母が仕事を休職し全面サポートすることで母児共に自宅退院することができた。実父母のサポートを得て、産後2週間健診、1か月健診で児の発育、A氏の精神状態も安定していた。【考察】妊婦の状況把握している段階で、母児同時退院が可能なのか、児は大丈夫なのかと心配をした事例であった。妊婦の養育意思に違和感がある段階で、その違和感を妊婦に伝えることで妊婦自身も養育に対する不安を早く払拭できたと考えられる。家族のサポートを拒んでいた理由について詳細に確認し、実母との来院や医療者から実母への連絡なども提案していき、妊婦を含めた家族をいかに巻き込むが必要があると考える。【実践への示唆】妊婦の意思決定に違和感がある場合すぐに立ち止まり、妊婦と共有することで、母子にとって最適な援助が何か見極めていきたい。