第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター51群 看護基礎教育①

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:花井 理紗

[ポスター51-1] 実習・授業形態の変更が共感性へ及ぼす影響

コロナ禍前と後での新卒採用看護師の比較

大内 鶴月, 山田 里香, 髙田 裕子, 仲間 智美, 佐伯 真奈, 本樫 佳奈 (洛和会東寺南病院)

【緒言】看護師にとって相手の立場に立ち共感する能力は重要である。共感とは、能動的また想像的に他者の立場に自分を置くことで、自分とは異なる存在である他者の感情を体験することである。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、臨地実習が学内実習や遠隔実習に変更せざるを得なくなり、臨床経験不足は否めないとの指摘もある。看護師にとって重要な共感性に影響があるのではないかと考えた。【目的】本研究は、実習・授業形態の変更が看護師の共感性に与える影響を明らかにすることである。【方法】協力が得られた5病院の病棟勤務する201W年、202X年(コロナ禍前群)と202Y年、202Z年(コロナ禍後群)に新規学卒者として入職した看護師366名を対象に、実習時間数と角田が開発した共感経験尺度改訂版を用いた共感性を問う無記名自記式質問紙調査を行った。コロナ禍前後での「共有経験」「共有不全経験」の比較を行うため、コロナ禍前群とコロナ禍後群に分け、対応のないt検定を行った。共感経験類型化の検討では、コロナ禍前群とコロナ禍後群、それぞれに「共有経験」、「共有不全経験」の各尺度得点の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け、その組み合わせから4つに類型化し、χ検定を行った。本研究はA病院倫理審査委員会の許可を得た(承認番号 倫-01-000191)。対象者に研究目的、方法、参加の任意性、辞退しても不利益は受けないことなどを書面で説明し、調査票の同意確認欄のチェックをもって同意を得た。【結果】158名(コロナ禍前群67名、コロナ禍後群91名)から有効回答(有効回答率43.2%)が得られた。最終学年の実習項目において、コロナ禍後群では所定時間の半分以上を臨地で実施できた実習の割合は、半数程度であった。コロナ禍前群とコロナ禍後群での平均の差を検討した結果、共感経験尺度得点で有意差は認められなかった。共感性の類型化は「不全型」と「共有型」が多かったが、コロナ禍前後での有意差は認められなかった。【考察】結果から、看護師の共感性において、実習・授業形態の変更との明らかな関連はみられなかった。これは、共感発達を促す要因として、親との関係、親の養育態度、兄弟・祖父母などとの関わりが影響し、乳児期から学童期まで共感反応は増大するが、それ以後は横ばいとなるとの報告があるように、共感性は親との関係や幼少期の過ごし方などに影響を受けるところが大きいことが考えられる。一方で、共感性の類型化で「不全型」「共有型」が多かったことは、若者の傾向や看護師という職業が影響していると考えられる。【結論】看護師の共感性において、実習・授業形態の変更との明らかな関連はみられなかった。その理由として、共感性は親との関係や幼少期の過ごし方などに影響を受けるところが大きいことが考えられる。