[ポスター52-5] 自殺企図患者に対する看護師の認識の変化
救命後方病棟における学習会の効果
【緒言】A病院B病棟は、救命センターから自殺企図患者を受け入れているが、病棟看護師は精神的なケアについては積極的な関わりが出来ていなかった。先行研究では、多くの看護師が自殺企図患者に対して不安や否定的感情を抱いており、介入へのためらいにつながっていると言われている。これは学習不足が原因とされ、知識の付与の必要性が示唆されている。そこで、自殺企図に関する学習会が、看護師の認識に変化を与え、精神的なケアにつながるのではないかと考えた。【目的】知識の付与が、自殺企図に対する看護師の認識にどのような変化を与えるかを明らかにする。【方法】救命後方病棟看護師約50名に対して、自殺企図に関する学習会を実施し、学習会前・直後(1週間以内)・7か月後の3回にわたって自記式質問紙による調査をした。質問紙は、先行研究を参考に精神看護認定看護師の助言を得て作成し、認識12項目、行動2項目の計14項目で構成した。3回の調査結果の比較をフリードマン検定し、有意差があった項目についてウィルコクソン符号順位和検定で分析した。統計処理には、SPSS Ver.29を用いて行い、有意水準はp<0.05とした。本研究は、A病院の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2229)。【結果】3回全ての調査に回答した18名を分析対象とした。回収率は36%であり、全て有効回答だった。認識は、学習会直後で「自殺企図患者への不安や恐怖」、「精神的関わりの必要性」など11項目の平均ランクが0.09~1.2上昇し、そのうち「自殺しないという約束の実践」など5項目に有意差があった。7か月後の平均ランクは、3項目が向上、7項目が低下、2項目は変化が無く、直後との比較では有意差は無かった。行動では有意差は見られなかったが、平均ランクでは学習会直後に「精神症状が強い患者への対処」が0.34上昇し、7か月後には「患者への情報収集」も0.31上昇した。【考察】学習会により認識と行動が変化したのは、自殺企図患者に対する看護師の不安や否定的感情が軽減し、患者に対して抱く認識に影響を与えたといえる。そして、看護師が精神的支援の必要性を認識したことで、抱いていた自殺企図患者の精神面介入へのためらいが解消され、精神症状への対処等の看護実践に結びついたのではないかと考える。7か月後においても認識の一部と行動で上昇がみられたのは、この間に、実際に患者の精神的側面へ関わることで、自殺企図患者に対する看護師の抵抗感がさらに軽減したため、行動に影響を与えたと考えられる。【結論】学習会は、自殺企図患者に対して抱く看護師の認識に影響を与え、この認識の変化が精神的なケアに移行していることが分かった。しかし、対象が18名と少なく、一般化するには限界がある。今後は、看護経験年数による認識の比較や、看護実践能力の向上に向けた取り組みが必要である。