第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター53群 業務改善に向けた取り組み③

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:久保 祐子

[ポスター53-6] 身体拘束低減に向けた現状調査

三原則「切迫性」に焦点をあてて

土井 尚美1, 村田 文明1, 鈴木 英子1, 髙橋 真紀子1, 持田 奈津美1 , 2, 野澤 陽子2 (1.順天堂大学医学部附属静岡病院, 2.順天堂大学医学部附属順天堂医院)

【緒言】リスク回避目的で身体拘束が行われている現状を重症度,医療・看護必要度(以下,必要度)の危険行動と指示に応じるかの視点で検証し,身体拘束割合と比較することで正確に三原則の中の「切迫性」を判断し身体拘束が実施できているか現状把握のため調査を行った.【目的】必要度の危険行動のある患者を「切迫性」のある患者と同意語と定義づけし,身体拘束実施割合との比較を行うことで,正確な「切迫性」の判断が行われているかを調査することを目的とする.【方法】対象は産科, 新生児,小児科を除いた全ての部署(13部署)とした.1.202Ⅹ年Y月の必要度から「指示に応じない」患者を抽出し「危険行動」と「指示に応じない」の項目に着目し,身体拘束患者との割合を調査した.2.同月の身体拘束割合とその割合を比較し分析を行った. 現状調査にあたり,仮説として3原則に則った身体拘束ができていれば身体拘束割合は危険行動の割合とイコール又は低いと考えた.3.「指示に応じない」のみの患者の記録を後ろ向きに調査し,身体拘束割合と「指示に応じない」理由を調査した.4.分析はSPSS Ver29を使用しT検定とχ二乗検定を行った.倫理的配慮として情報は個人情報を含まないデータとして処理し,個人情報保護に努めた.A病院看護部倫理審査委員会の承諾を得て行った.【結果】身体拘束割合と危険行動有りとの差は全部署で見られた(MAX45.1,MIN1.5). 危険行動の割合と身体拘束割合を比較すると,身体拘束が高い部署は13部署中11部署であった.特定病床と一般病棟の脳血管障害の多い部署,運動器障害を持つ高齢者割合が高い部署に有意差がでた。身体拘束の割合と危険行動との差に病棟間の違いがあるか分析したが,有意差のある項目はなかった.指示に応じないのみで身体拘束が実施されている割合は72.9%であった.指示に応じない理由には高齢者や鎮静中,意識障害が多かった,【考察】現状比較の結果,身体拘束の割合と危険行動の割合に差があり,「切迫性」の認識の違いが明らかになった.また,差が大きい部署の特徴として,認知症患者や意識障害・鎮静薬の使用が考えられる.そのため,診療の指示に応じないことを「切迫性」と捉え身体拘束を実施していることや部署により「切迫性」の判断基準が異なると推測された.このため指示に応じないことを「切迫性」と解釈する慣習により身体拘束が低減しないと考える.低減のためには指示に応じないことがリスクに繋がる直接的要因になるのかを検討すると共に拘束なしでの成功体験を積み重ね,慣習のアップデートをする必要がある.その為に「切迫性」の判断能力と代替案のベースとなるケアの提示が必要である.【結論】A病院の身体拘束は「切迫性」の判断に認識の違いがあることが明らかになった.低減するために判断能力向上に向けた教育とケアマニュアルの提示を行っていく.