第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター53群 業務改善に向けた取り組み③

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:久保 祐子

[ポスター53-5] がん薬物療法室におけるオリエンテーション

標準化と時間短縮に向けた動画導入

永野 純子, 石井 有紀, 古谷 佳穂里, 北村 悦子, 櫻木 麻里子 (慶応義塾大学病院)

【背景】 不安軽減や安全な治療のためにオリエンテーション(以下オリエン)が行われている。A センターでも①病状や治療内容の理解と同意の確認②レジメンの特徴をふまえた副作用とその対応③患者ががんや治療と向き合うことを支援する目的で外来がん薬物療法開始時にオリエンを行っている。外来がん薬物療法を導入する患者は123件/2か月、オリエンにかかる平均時間は一人当たり31.5分を要していた。口頭と紙面での説明を中心としたオリエンはその日の業務量や看護師によって内容に差が生じ、また対面で行うためにはオリエン実施者の時間調整のため患者待ち時間も生じている現状がある。動画によるオリエンは、説明内容が統一し説明者の確保という点において利点があると言われている。そのため、外来がん薬物療法に関連する情報の一部を動画にすることで、説明内容が標準化され、心理面や副作用などの個別性が高い情報について患者と対話する時間や他の業務に費やすことが可能となると考えた。【目的】外来がん薬物療法の多くの患者に共通するオリエン内容を検討後、動画に編成し標準化する。【実践内容・方法】1.外来受診から治療終了までの一連の流れや体調管理の重要性や血管外漏出の予防についてなど共通した内容を検討し約9分の動画に編成した。院内の写真やイラストを使用しナレーションを入れた。2.オリエンに要する時間を、動画導入前後で比較評価した。3.難聴を含む視聴覚障害を有する患者へは、支援者や他のツールを活用しオリエンを実施することとした。 【結果】 動画導入後の約3カ月間のオリエン件数は107件であった。うち1件は難聴のため動画音声が聞き取れなかったため口頭と紙面でのオリエンを実施した。オリエンの平均所要時間は導入前31.5分、導入後19.9分であり、11.6分の時間短縮となった。オリエンの最大所要時間は、導入前60分、導入後70分と導入前後で大きな変化はなかった。 【考察】 共通した説明内容は、オリエン動画導入により標準化ができ、結果短縮された時間を他の業務に費やすことができた。さらに、患者は、待ち時間に動画を視聴できる環境が整備され、待ち時間の体感時間が短縮し負担感が軽減された可能性が考えられる。一方で、導入前後でオリエンの最大所要時間に大きな変化は見られず、がん薬物療法という未知の経験に対する不安や理解は個別性があることがわかった。患者ががんやがん治療に伴う気がかりや思いを表出できる関わりを通して、不安の軽減や安全に外来がん薬物療法を受けられるよう支援していくことは重要である。 【実践への示唆】 動画内容の適正について評価修正を継続し、より患者のニーズにあったものに改訂していく必要がある。今後、病院ホームページに掲載を目指し、遠方で患者を支援している家族の理解促進や、新規患者が医療機関を選択する上での情報提供の一助となることを期待する。