第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター53群 業務改善に向けた取り組み③

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:久保 祐子

[ポスター53-4] カンファレンス充実に向けた入浴業務効率化

その人らしい生活支援の実現のために

國生 真希 (札幌西円山病院)

【背景】 A病院は病床数663床の多機能慢性期病院である。近年の地域包括ケアシステムの進展により、退院支援が強化される一方で、看護業務は日常生活支援に追われ、その人らしい生活の実現や退院に向けた多職種カンファレンスの時間を取れない課題がある。今回、カンファレンスの充実を目的とした入浴業務の効率化に取り組んだため、その効果を以下に報告する。【目的】入浴業務の効率化と、入浴ケアの質向上の両側面から改善を行い、その成果及び今後の課題を明らかにする。【実践内容・方法】202X年5月~202Y年2月業務改善委員会を中心に以下の内容を実施した。1.臥位浴対象患者が多い10部署の入院患者325名を対象に入浴に関する現状調査を行った。2.2001年IOMが報告している「Crossing the Quality Chasm」の「質の高い医療提供のための6つの視点」1)有効性、2)安全性、3)患者中心性、4)適時性、5)効率性、6)公平性を参考に、入浴の在り方のGAP分析を実施し、公正性以外の視点に沿ってあるべき姿5つを抽出した。3.あるべき姿に近づけた入浴方法を策定し病棟展開を行った。4.改善後の入浴状況調査とアンケート調査で評価を行った。【結果】入浴担当者の役割の見直しと配置人数の効率化により、平均入浴介助人員は8.9名/回から3.5名/回へ減少した。入浴実施日数は2日/週から5日/週に増加し、入浴患者数は平均17.5名/日から9.6名/日となった。また患者一人当たりの入浴時間は8.9分から13.5分へ増加した。アンケートでは「患者の状況に応じた入浴対応が可能となり清潔が保てるようになった」「一日当たりの入浴対象者が減少し、検査やリハビリ、離床活動への影響が減少した」「入浴介助の配置人数が減ったが、IAは生じておらず、むしろゆっくり入浴介助できる」などの結果が得られた。またカンファレンス実施回数は、1.2回/週から4.5回/週へと増加した。【考察】 この入浴業務の改善から、入浴時間の増加によって、「体がポカポカになったと喜んでいる」の意見があり入浴の『有効性』が得られた。1日の入浴患者数の減少は、時間内に予定患者の入浴を終えなくてはならないという心理理的な切迫感が減少し『安全性』につながった。また、患者の体調や意向など意思決定への配慮が可能となり『患者中心性』『適時性』に沿った入浴となった。入浴介助の配置人数の最小化と、役割の明確化はカンファレンスを含む入浴以外の業務への影響が軽減され『効率性』につながった。【実践への示唆】この取り組みは、業務の効率化とともに、質の高いケアを考える視点と、患者の意思決定支援の向上につながったと言える。今後慢性期病院は、診療報酬改定に伴い、更なる療養退院支援の推進が求められ、看護業務の負担増加が想定される。必要となる継続的な業務改善において、この視点は患者の意向に合わせたその人らしい生活支援体制の実現につながることが示唆された。