[ポスター55-6] 第二報 臨床推論の構築と授業展開の考察
―TBL導入による主体的な学びの効果
【緒言】新カリキュラムでスタートした臨床推論では自ら判断し応答する力が必要となる。A校では臨床判断力の育成のため、インプット・アウトプットを中心とした臨床推論Ⅰ・Ⅱ、実践を中心とした統合実習の3ステップでカリキュラムを構築している。昨年の第一報では、臨床推論Ⅰの授業の工夫と基礎的知識の定着との関連について報告した。2年次の臨床推論Ⅱではさらに発展し、主体的な学びの強化を目的にTBL(チーム基盤型学習:以下TBL)を取り入れている。TBLは主体的に学ぶ事前学習が科目目標達成に大きな位置を占めている。TBLが臨床推論力の育成や主体的な学習にどのような効果をもたらすのかを明らかにし、今後の看護基礎教育に寄与したい。【目的】臨床推論ⅡにおけるTBL導入による主体的な学びの効果を検討する。【方法】202X年度に臨床推論Ⅱを受講した生を対象に授業終了後に質問紙を用いた聞き取り調査を実施した。量的データはExcelで単純集計を実施、自由記載はコーティングをおこない、カテゴリー化した。研究対象学生には、研究の目的及び個人情報の保護、研究参加の自由意志の保障、結果の公表を文章および口頭で説明し、質問紙上に同意の可否を回答できる項目を作成し同意を得た。また学内の倫理審査においてデータの使用および公表、倫理的配慮に関する承認を得た。【結果】質問紙の回収率は30名(96%)。授業内容の中で最も学びが深まった項目は、TBLのフェーズ3である応用課題を通した推論思考の強化が19名(63%)と最も多い結果となった。応用課題を通した推論思考の強化の自由記載では「チーム活動の効果」「事前学習の効果」「応用課題内容の工夫」「思考の強化」「レディネスの確認」の5つのカテゴリーが形成された。またTBLの学習効果については「チーム活動の効果」「主体的な学び」「学習を通して得た自己肯定感」「レディネスの確認」の4つのカテゴリーが形成された。しかしながら、自由記載には知識が追いつかずに課題と上手くつながらなかったという記述があった。【考察】A校では既習内容との関連と学びの連続性を示し、TBLの課題は今まで学んできたことの活用ができる工夫を行っている。実際にフェーズ1の事前課題やフェーズ2の個人・チームテストなどの準備確認プロセスが応用課題で上手く活用できている学生が多く、フェーズ3の応用課題では「事前学習の効果」が形成された。それは受け身ではなく自己課題として学習に取り組んだ成果だと考えられる。実際にTBLの学習効果でも「主体的な学び」が形成されている。【結論】TBLの導入は学生の主体的な深い学びの推進に効果的であったと考えられる。しかしながら本研究を通して、知識の獲得と定着が不十分で課題の取り組みに困難を感じている学生がいることも分かった。個々の学生に応じた支援方法を再検討していく必要がある。